第5話

 儘は居住空間に家を創造した後、寝室へ移動しいつものように魂力が溜まるまでの間は布団に潜り込んで眠りに入った。

 それから暫く経ち、各階層間の紐付け作業を終えた蒼が寝室に訪れる。


 「マスター、失礼します。」


 そう言いつつ彼女は儘の横にその身を横たえた。


 500,000年後


「マスター、起きてください、時間です。」

「ん?あぁ、今起きるよ。」


 蒼により目覚めを促された儘は、創世の仕事をいつものように開始していくが、今は隣に蒼が寄り添っていた。


「さて、私は魂力増殖炉を増やすから、蒼は空間の現状の確認と拡張をやってくれ。」


 そう言いつつ儘は蒼に1億の魂力を渡す。


「はい、マスター。」


 今回の覚醒で新たに創造したのは魂増殖炉4基と、新たに拡張した分の空間だ。これによりストラトゥムカルパーテルミヌスの大きさは以下のようになった。


マス総数

・宇宙階層185,761マス

・空中階層 73,984マス

・地上階層 18,496マス

・水中階層 18,496マス


一辺

・宇宙階層431マス

・空中階層272マス

・地上階層136マス

・水中階層136マス


「蒼~、こっちは終わったよ。そっちはどこまで終わった?」

「はい、マスター。こちらも終わりました。」

「じゃ、今回余った魂力は次回に繰り越そう。」


 そして、二人は儘の作り出した居住スペースへと向かった。

 先ほど儘が創造した家だが、且つて儘が人間として過ごしていた場所と時間で在った頃の様式を参考にして、儘の想像で創造されたものだ。

 一階は玄関とキッチンとリビング、二階が寝室だ。

 ただ、神格化した者にとってこれらは雰囲気作り以上の意味は持たなかったりするのだが、元が人間の儘にとってはこの様な環境づくりは、心落ち着ける場として創造していた。


500,000年後


「マスター、起きてください時間ですよ。」


 儘は耳元で囁く蒼の声にこそばゆい思いを抱きながら体を起こす。


「おはよう、蒼。」


居住空間から、階層世界ストラトゥムカルパーテルミヌスの空間へ移動してきた二柱は、いつものように仕事を開始する。


「今回使用できる魂力は、前回からの繰り越し分を含めて16億6771万3千だ。その内の4億分は神力に変換して魂力増殖炉を覆いレイヤーコアとする。これは私の方で作業をしよう。蒼は前回同様に空間の拡張作業をやっておいてくれ。」

「はい、マスター。」


 蒼は前回同様に空間の拡張を行った。


マス総数

・宇宙階層247,009マス

・空中階層 98,596マス

・地上階層 24,649マス

・水中階層 24,649マス


一辺

・宇宙階層497マス

・空中階層314マス

・地上階層157マス

・水中階層157マス


「マスター、空間拡張終了しました。」

「了解っと、では次の作業に入りますかね。」


 今回儘が創造するのはこの世界の理。

 ある程度空間の拡張が出来た今、彼は次のステップへと進めるために準備を始めていく。

 彼は想像する、この世界の理を、自らが生み出した世界に適用させるためのシステムを。

 このシステム自体には理としての役割は持たせていない。

 このシステムはあくまでも理を適用させる為だけのものだからだ。


「さて、今回はこの世界の根幹を支えるシステム構築に入っていくわけだが、このシステムの構想自体は、渡してある情報通りにだよ。」

「はい、マスター。ただこの仕様だと私とマスターだけでは到底手が回らにと思いますが。」

「まーね~。やろうと思えばできるんだけどね。だたシンドイんだよね。・・・なので、このシステムの維持管理を行わせる存在を先に生み出します。」


 今回儘が創造するシステム管理者は、この世界と密接な関係を持たせるために、レイヤーコアを核として用いて作成する。

 レイヤーコア自体神力1を使用した外殻と内在する魂力増殖炉により、それなりの情報処理能力を与えることは可能なのだが、すでに防衛機能としての能力を与えられている為に、今回のシステムの管理する能力を付与するには少々力が不足しまうのであった。

 なので、今回はこのレイヤーコアを核として、新たな存在を生み出すのだ。

 そして、神力をそれぞれに2使用して、システムの演算装置としての役割と、それを機械的にでは無く、ある程度融通の利く曖昧さを備えた判断で管理できる人格を持つ、4柱の存在が誕生した。

 こうして生まれた彼らは、遠い未来発展するこの世界での宗教で、儘と蒼を除く神々の中で、最も上位の神として崇められる存在になるのだが。

 このお話は遠い遠い未来のお話である。

 さて、今回生み出されたこの四柱の神々だが、与えられた役割が役割なだけに、それなりの裁量権を持たされている。

 基本的にはこれから構築されるシステムに対してのみなのだが、システム自体がこの世界に多大な影響を与えるものなので、その影響力は絶大なものになる。

 故に儘はセーフティーとしてある方策を取っていた。


「みんなおはよう。」

「「「「おはようございます。お父様!」」」」

 四つの幼い声が儘の問いかけに答える。


 4柱の管理神は、人格としては子供だ。それも、管理神としては珍しく、成長型の人格を持っていた。

 本来、こうした管理神は情報の蓄積により、行動の最適化自体は出来る程度の物に仕上げるのが、神々の中では通例となっているのだが、儘はあまりこのやり方を好まなかった。

 因みに蒼は、所謂成人女性として、生み出されているので成長の幅がそれほど大きくはないが、それでも、他の世界の創世神が生み出した同格の存在と比べると、かなり大幅な変化が期待できる状態だ。

 なので成長型の人格で、しかも精神が子供となれば、その成長の幅は大きくなって然るべきだろう。


「おはよう。体の調子はどうかな?」

「私は問題ありません。」

「私もです。」

「私もです。」

「私も問題ありません。」

 元気よく質問に答える子供の神様たち。


 儘は思う、今後彼らが経験を積んでいく中で、どんな個性を育んでいくのかを。

 そして、それを今後見守っていける自分の立場に、気分はすっかり父親の物であった。

 今はまだ、生まれたばかりで個性と呼べるものは見受けられない彼らが、この世界の管理をしていく中で、どのように感じ、思い、行動していくのか。

 蒼もまた生み出された側の身ではあるが、その母性を刺激されていた。


「みんなおはよう。」

「「「「はい!おかあさま、おはようございます!」」」」


 この時蒼に衝撃が走る。

 ただ見るだけでも刺激されていた母性が、4柱の無垢な声に強烈な情動をその身に宿らせる。


「かわいい子供たちが生まれて、私は幸せだわ。」

 そう言いつつ、儘にそっと寄り添う蒼。

 儘はそんな蒼の変化に、目を見張るものを感じつつも優しくそれを受け入れる。

「そうだな。今後楽しい時間が私たちを満たしてくれるだろう。」

「じゃ、この子たちに名前を付けましょう。貴方。」


 祝福が4柱の神によってもたらされた。


 こうして、サエクルーム紀は終わりを迎え新たな時代へと突入したのであった。

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