詩集

帆場蔵人

第1話 季節を歩む者

春風に乗り遅れた僕は

彼方へと消えゆく翼を

煮え滾る沈黙に囚われ

目を眇めて見送るのだ


あの夕陽の下を目指し訥々と

西へ西へと歩んでいくときに

僕の孤影は東へと歩んでいく


峻険な山を越え、深い河へと踏み入り

足跡と墓標が絶え間なく連なる道行き


幾たび夕陽を見送ったのか

数えることすら忘れたとき

季節は忘れる事なく夏へと脱皮していく

無垢つけき太陽よ、すべてを灼きつけろ


深い河の流れに橋を架けよう

それが僕の墓標となるのか


九百万年の昔に樹上から草原へと

僕らの先祖が降り立ったその時と

この時は繋がっているのだ


無垢つけき太陽よ

お前はそれを観てきたのだ

この春に築く墓標を越えゆく

すべての季節を歩む者たちの

魂が還る場所よ


地平の果てまで連なる墓標は

いつかそこに辿り着くだろう

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る