3-2 風
そしてチャンスが巡ってきた……。大浦為信が南部に謀反を起こし、津軽の地より南部の主要な勢力を追い払ったのである。残されたのは旧来伝統的に浪岡家臣だが、いやいやながら南部に従ってきた領主たち……。唯一純粋な南部家臣として田舎館の千徳分家が存在するが、一家ではどうにもならぬ。
ここで長老の顕範は腹の底を明かした。
“いまこそ浪岡は独立独歩で行くべきだ”
南部の力が弱まった今、残された諸勢力を結集して、再び浪岡に仕えさせる。実際に多田や朝日など遠く離れた者も出仕してきた。ここまではよかった。旧来伝統的な家臣が再び結集し、かつての栄光の日々を取り戻すのだ……。
だが新勢力である為信の威圧は強く、浪岡に対し南部とこれまで結んでいた関係を、改めてわが方と結べと脅迫してきた。一応建前としては、“津軽を豊かにするためには岩木川の一元管理が必要”とかほざき、協力を求めてくる。
屈してはならぬぞ、ならぬぞ……。
周りの者らの顕範に対する態度、非常に煙たいものへと変わっていく。どこの誰かは顕範を追放する計画まで立てているらしい。馬鹿らしい。
だがまたしても風向きは変わろうとしている。大光寺の勇士、滝本重行が浪岡に参上した。南部は再び浪岡への関与を強めようとしている……。顕範と多田水谷の両管領、補佐などの重臣が両脇に一同座す。中央には使者の滝本。対面するは上座の顕村である。
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