第25話「最嘉と唯一の感覚」 前編(改訂版)
↓京極 陽子のイラストです↓
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第二十五話「
「先ず第一に、この度の
「それは、もし
俺は謁見の間の一段高い玉座にて、その使者に対峙する。
「貴殿を粛清するか否かは私の知るところでは無い、それも全て
「勝手なことをっ!我が主を卑怯にも暗殺せしめようと企んでおいてその言いぐさ!
俺の横に控えていた
こういう場では比較的理性的に振る舞える彼女には珍しい態度だが、つい先ほどの事を踏まえればそれも納得できる。
「誅せるのならそうしろと命をうけた……わ、でも、死なない様なら申し開きを聞くだけの価値はあるでしょう、とも」
「このっ!」
「
――!
思わず腰の短剣に手をやる
だが、
「……」
納得いかないままでも、主たる俺の一言で渋々と引き下がる
「……ふっ」
対して俺は……”
「冗談で無くて本気で殺せと命令を受けた……それでもサイカくんは?」
おかしな事だが、暗殺の張本人たる
「そういう女だったからなぁ、
「……」
俺の応えに呆れたのだろうか?
――っ!
今度は
「大丈夫だ……この期に及んでそれは無い」
だが俺はそう確信していた。
そして俺の言葉に、
「……」
深紅の弓を左手で握って、自身の前面に水平に掲げ……
チャッ!
右手で抜いた短剣をその弦に当てる。
俺を含めた三人分の視線に注目された”
――プッ!
目一杯まで張り詰められた糸……
そこに切り目をつけられ、ヴァン!ヴァン!と、空気を振動させて各々の方向に弾け飛び、そのままダラリと力なく垂れ下がる
「これで信用して貰えるかしら……
もう暗殺の意志は無いと、敵中で唯一とも言える武器を捨ててそれを証明する女戦士。
「……」
俺は黙ってその女……見知った
「どうかしら……それとも全部脱ぎましょうか?」
応えない俺に、彼女は
「……」
「……そう?」
それでも変わらず沈黙する俺に、女は呟くと、ゆっくりと黒マントの前をはだけて上着の胸に手を添える……
「……」
俺は黙ったまま
「って、そこは否定して下さい、
結果的に、慌てて
「いや……そうだな…………なんとなく?」
「……」
「……」
若干残念そうにそう返事してしまった俺を、しらけた視線で見るショートカットと
――うっ……
「と、とにかくだ!……
俺はその場の空気を誤魔化すように、
「では、
俺の答えを聞いて
「いや、そのつもりは無い」
「……
「俺が奪い取ったのは
「?」
俺の言い分を理解出来ない使者に続ける。
「俺は
一度敵国に奪われ、敵領土になったからには、そこから改めて奪ったのだから正統に
たとえそれが一日でも二日でも、一度、
俺の理屈はこうだった。
「
的確にツッコむ
「説得して引き抜いたんだよ、な?な?」
あくまでしらばっくれる俺。
「…………」
俺の目配せに、
「彼女は……
俺から自身の後ろで警戒する
「あぁ、
「……」
「あの剣技……確かに噂以上だわ」
実際にあんな
「
――なら、この使者は……
「……そうね、
――くっ、この
「元カノっ!……彼女……」
「…………むぅぅ」
”元カノ”のところで、謁見の間の空気が明らかに嫌な意味で張り詰めるのが解った。
しかし、
もしかして”敵の大将となに仲良くしてるの!”みたいな感じだろうか?
「わ、解った、で条件は?」
そんなことを感じ、内心焦りながらも俺は交渉を続ける。
「
「具体的には?」
「
「……」
玉座に座ったままの俺は、少しだけ思案するように右手をそっと
――ふ……む……
―
「……」
我が
「……」
実際は
全く違う立場の二人が緊張気味に見守る中、俺は決断を下す。
「了承した!対価は期待して良いんだろうな」
「……」
「……」
その言葉を沈黙で見守る二人。
臣下たる
「……本当に、そう報告して良いのね?……サイカくん……」
実際は
そして
この面子の中で、話を持ってきた
「無論……で、対価は?」
俺はそういう感想を抱きつつも内に抑え、交渉の醍醐味……つまり報酬の話題に取りかかる。
「
――
「破格だな……よし、問題ない」
俺は立ち上がって交渉成立と、握手のために右手を……
「……」
差し出そうとしたが、結局そのまま後ろに下げた。
一瞬だけ視界に入った
――とはいっても
俺は代わりにその手を上げて
第二十五話「
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