何度心が折れそうになっても
というのも、実はこの少し前にも、滅茶苦茶に食い荒らされた
「左近瑞くん……」
この時点では酷く取り乱すこともなかったものの、赤島出姫織はたまらない気分にはなっていた。胸の奥がなんとも言えない感じになって、腕を突っ込んでぐちゃぐちゃに掻き
まともに恋もしたことのなかった人生だったが、それがようやく、多少なりとも普通の人間のそれに近いような何かが得られそうな感じがしていたところにこれだから、まあ、内心では叫びたいほどだったのかもしれん。
それでもこいつは歯を食いしばって自分を奮い立たせた。
『こんなことで負けてられない…!』
と自分に言い聞かせた。
落ち込んでなどいられない状況であることも分かっているのだ。だからその度に自分を奮い立たせる。自らそれができる程度には成長していた。
故に今度もそうするのである。
『泣いてられない…! 泣いてられない…っ! 今は戦うんだ! 泣くのは全部終わってからだ……!!』
涙を拭い、自分の家を後にして、次の化生を求めて走る。その顔は、涙を拭う度に戦う者の顔へと変わっていった。何度心が折れそうになっても立ち上がり、戦う。
自分にはそれしかできないのだから。
魔力を込めた剣を振るい、少女は戦った。いつまでなどと考えることもなく、ただひたすらに。
そんな赤島出姫織の想いも流れ込んでくるのを感じながら、私はハリハ=ンシュフレフアを待ち構えた。しかし、私よりも
「おそい! こっちからいく!!」
止めても無駄だということも分かっていた。だから私は、爆発するかのように地面を蹴って宙へと舞い上がり、第三宇宙速度さえ超えて飛び去って行くのを見送ったのだった。奴が片付けてくれても結果としては私の勝ちになる。それで済むなら儲けものだ。漁夫の利というのも嫌いじゃない。お前が勝ったら真っ先に母親を、
精々頑張ってきてくれ。万が一駄目でも、お前にもちゃんと仕込んであるからな。
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