救いでもある
人間の死体の塊だったバージャムデレクェの体は爆炎と共に弾け飛び、黒焦げの肉片がまき散らされた。
だが、バージャムデレクェはまだ他にもいた。それが人間の死体によってできていることに気付いた戦闘ヘリの搭乗員が、
「あ……あぁ、あひゃあぁあぁあぁぁーっっ!」
などと、声にならない声で絶叫する。
無理もない。戦場を経験した人間でもさすがにここまでのものを目にすることはないだろう。人間ならそうなっても何もおかしくない。
だが、ドラゴンにはそんなことは関係ない。ドラゴンにとって人間など本来は食料の一つに過ぎん。今は
図体がデカいばかりで大したこともできんバージャムデレクェ共にブレスを立て続けに放ち、片付ける。
人間の死体や血や肉片が撒き散らされようとも何とも思わない。この種のドラゴンが人間に対して与えるものは破壊と破滅だ。それ以外にはない。
だがこの状況でのそれはむしろ人間にとって救いでもある。バージャムデレクェの体として浅ましく醜い姿を晒し続けるよりは、安らぎも得られよう。戦闘ヘリの自衛隊員達にそれを見続けさせるのも酷だしな。
取り敢えずその場のデカブツは片付いたことで、ヘリは補給も兼ねて後退したようだった。
もっとも、そのヘリ部隊が再び飛び立てるかどうかは分からんが。装備等の消耗以上に、さすがにパイロットの精神的なダメージが大きかろう。
「……」
去っていくヘリを見送り、新伊崎千晶は次の標的を探してメヒェネレニィカを従え、ドラゴンと共に移動したのだった。
しかし、死者を利用していたのは何もバージャムデレクェだけではなかった。実は人間の方にも、それを利用していた奴がいたのだ。ネクロマンサーと呼ばれる連中だ。
普段は死者を冒涜する不届き者として嫌われることの多い奴らだが、この時ばかりは人類側として戦うしかなかった。なにしろ地球が滅んでしまってはネクロマンサー自体の存在意義が失われる。人間がいてこそのネクロマンサーだ。
皮肉なことにゾンビとして使役し化生共と戦させる為の死体に事欠かず、一種の物量作戦の様相を呈していた。
アメリカのある都市では、ネクロマンサー共は周りにある死体を次々と立ち上がらせ、肉の壁を築き自分達を守りながら、また別の死体を操り攻撃に用いる。数が多いからそれがまた実に効果的なのだった。
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