ネットワーク

「あ~…さすがにこれはヤバいかな~……」


同じ頃、石脇佑香いしわきゆうかも、笑ってばかりいられないと感じていた。と言うか、


「こんなことになったらアニメ見れないじゃん…!」


不機嫌そうに口を尖らせて言う。


そうだ。今のこいつには人間の命よりもアニメの続きが見られなくなることの方が重大だった。事が終われば私が巻き戻すことは分かっていても、やはり腹に据えかねたのだ。


「調子に乗ってくれちゃって、ふざけんな!!」


そうして石脇佑香はネットワーク中に撒き散らした己のコピーを通じ、地球上のあらゆる場所で同時に情報を探り、軍隊の指揮系統に割り込んで化生共の位置や動きを伝えた。


既にインターネット自体もズタズタだったが、サーバーなどに残った石脇佑香のコピー同士がやり取りすることでネットワークの代役をしたのである。


それだけではない。残った人間達の戦力の分布や状況についても伝えたのだ。国や地域や勢力に関わらず。


「こ、これは!? どこからの情報だ!?」


指揮系統が失われて有機的な連携が取れなくなっていたそれぞれの部隊は、突然回復した通信網と次々にもたらされる情報により、戸惑いながらも互いに連携を始めた。


さらに石脇佑香は、通信網だけではなく、電波を操ることで無線給電し、完全ではないが電力網さえ回復させる。


さすがにテレビ放送は機能していなかったものの、


「○○方面に怪物が集中しています。どなたか可能な方は迎撃をお願いします!」


という感じで自らがアナウンサー代わりをして化生共の動きを伝えた。


無数の石脇佑香のコピーがばら撒かれたことで、世界中のあらゆる場所で同時にな。


「○○か……」


人間の能力者達はそれを見て、戦略を立てた。


もちろんそれは自衛隊についても同じだった。


無線機が壊れていてもヘッドセットに直接音声が届き、ディスプレイには残存部隊の状況が克明に記された。ありえない現象ではあったが、今はもう、その奇跡に頼るしかなかった。


指揮者を失いバラバラに孤立していた各部隊も体制を立て直し、反抗を開始する。中にはたまたま遭遇し合流した人間の能力者や、私の影と連携するものも出始めた。


「我々はまだ生きている! 命ある限りは諦めない!!」


「まだやれる! まだ負けてない!!」


そう声を出し、折れそうになっていた自分達を鼓舞する者もいた。


そうだ。お前達はまだ生きている。生きているうちは抗ってみせろ。


奴らは強大だが、一部を除けば人間の力でも倒せないものではない。人間の力で倒せないものは私達に任せておけばいい。私で勝てない相手なら、どのみち人間にもどうすることもできんのだからな。


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