地球を滅ぼすつもりか?

カハ=レルゼルブゥアは、炎を司る神とも言うべき存在だ。炎熱を使う能力では私ですら敵わない。


即席ではあるが地面に掘った窯の中で、サタニキール=ヴェルナギュアヌェをこんがりと焼くつもりなのだろう。それに抗う術は、サタニキール=ヴェルナギュアヌェにはない。


だがその時、両手で熱量を高めている黄三縞神音きみじまかのん目掛けて奔る影があった。


「……!?」


それに気付き、両手に集めた熱エネルギーを、左右に放つ。カアッと強い光を放つそれを浴びて何かが地面に落ちた。一瞬で黒焦げとなった、厚さ数ミリほどの円盤状の何か。


<凶暗の旋風>シャノォネリクェだった。ハリハ=ンシュフレフアの尖兵たるこいつがここにいる意味……


その瞬間、私は確信を得た。


『やはり貴様、ハリハ=ンシュフレフアと手を組んだということだな、サタニキール=ヴェルナギュアヌェ?』


そう、ロクでもない奴同士が組んだのだ。実に業腹である。


「……」


そんな私の前で、黄三縞神音が空を、いや、空の更に向こうに視線を向け、呟いた。何かの気配を察したようだ。人間の目には捉えられないが、凄まじい力の塊がそこにある。大気がミシミシと軋むような圧も感じる。


「…きた……」


黄三縞神音が呟く。


同時に、私にも分かった。<奴>だ。遂に奴が来たのだ。ハリハ=ンシュフレフアが。だからこそ、カハ=レルゼルブゥアは早く生まれてきたのである。


「貴様、地球を滅ぼすつもりか? あんな奴と手を組むなど」


地面の穴から這い出してまたあのニヤけた顔を向けてきた古塩貴生に対して私は言った。


「……」


だが奴は何も応えない。ただニヤニヤと笑っているだけだ。こいつにとっては人間がどうなろうと地球がどうなろうとどうでもいいらしい。自分の思い通りにならないのなら何もかもぶち壊してしまえという発想だけが伝わってきた。無駄に力を得た愚か者は本当に始末に負えんな。


しかも、さらに出し物があるようだ。


「な、なに…? この感じ…?」


宇宙から近付きつつあるハリハ=ンシュフレフアとはまた別の気配が、私の肌をビリビリと痺れさせた。思わず呟いた月城こよみにもはっきりと感じられているらしい。かなりのデカブツだ。ロヴォネ=レムゥセヘエと同等、いや、この感じ、それ以上だ。サタニキール=ヴェルナギュアヌェよりも上かもしれん。


その気配の方に視線を向けると、空気が澱み、固まり、何かが形を成そうとしているのが分かった。しかも、みるみる気温が下がっていくのが分かる。


おそらく、あの雲の塊のようなところの直下の気温は既にマイナス数十度にまで下がっているところもあるだろう。何の備えもなくいればほんの数分で凍死するレベルだ。既に被害が出始めている可能性があるな。


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