悔恨
『人間大の物体が秒速二千キロメートルで移動してるのと同じになる。そうすれば何が起こるかくらいは、分かるんじゃないのか?』
クォ=ヨ=ムイのその言葉に、錬治達は完全に察してしまった。そして、自分達が取り返しのつかない失敗をしてしまったことに気付いた。
「Shiiiiiit!! 奴は最初からそのつもりだったんデス! 私達に『世界を救え』とか調子のいいことを言ってその気にさせて、実際には破壊の手助けをさせて嘲笑うつもりだったんデス!!」
アリーネが激高しながらどこから持ってきたのかナイフを手に、植え込みの枝を手当たり次第に薙ぎ払っていた。そんなことをすればますます衝撃波が発生するというのに……
錬治がそう思いつつ、苦しくて声を出せないでいると、
「やめてください! そんなことしたら余計に大変なことになるって分からないんですか!?」
と、綾乃がなるべく体は動かさないようにしながら叱責した。
だけどもう、いまさらそんな風に気を遣ったって手遅れなことは、彼女にも分かっている。だから余計に苛立ってしまうんだろう。
人間大の物体が、秒速二千キロで移動したことによって発生する衝撃波が果たしてどれほどのものか、錬治にはまったく分からなかった。
ただ、
『いつだったか、ロシアで隕石が落ちた時、衝撃波で大変な被害が出たらしいけど、その時の隕石の速度が確か秒速数十キロってレベルだったんだっけ……
それであれだけの被害が出るんだから、秒速二千キロなんていったら、それこそ何が起こるのか想像もつかないよ……』
錬治達の目からは、今はただ砂ぼこりが立ってるだけに見えてても、時間が経ては人も物も無茶苦茶に破壊されていく光景が繰り広げられていくことは分かってしまう。それこそ、一つ目の化け物が起こす惨劇以上の恐ろしいものになるだろうなってことだけは想像できてしまう。
『アリーネさんの言う通りだ……僕達はクォ=ヨ=ムイにまんまと騙されていいように利用されたんだ……
ちくしょう……僕の人生の最後がこれかよ……』
彼はただ、泣いていた。自分の愚かさが、迂闊さが、許せなくて、やるせなくて、泣いていた。
そして、みほちゃんやシャリーやエレーンにまで自分達のしたことの片棒を担がせてしまったことが悲しかった。
特にみほちゃんは、最初の病室で錬治が散々動き回ったから、彼女の両親もきっと衝撃波に襲われる筈だ。
『僕がみほちゃんの両親を殺すことになるんだ……
ごめん…ごめんねみほちゃん…本当にごめん……』
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