第27話 新大陸・2
俺は、復活した勇者を足止めだけして無事、新大陸への移動に成功した。
あいつ羽生やしてるからなぁ......ここまで追いかけて来なければ良いんだけど......
新大陸へ移動中、何処かの戦艦に出会い、何とか敵では無いと言う事を示した。
そこで戦艦側の者に『大陸まで案内しよう』と言われ、果てしない大海原を彷徨する俺達は、それを承諾した。
そして、無事に新大陸まで辿りつけたが、その大陸の港で待ち伏せされていたらしく、俺は部下に、無抵抗の命令を出すが、問答無用に殴られそこで俺は、意識が途絶えた。
港臨時収容所内・・・
俺何もしてないのに!理不尽過ぎじゃね?
俺は目が覚めると、牢屋の中に居た。
「おい!誰か居るのか!ここから早く出せ!はあぁぁ......」
俺が大きく溜息を吐くと、青い鎧を纏った如何にもなおっさんが現れた。
「ようやく目が覚めたか。どうやら少し強く殴り過ぎてしまった様だな」
「誰だ?おっさん」
「おっさんとは失敬な。私は、隣の王国騎士の所属する将軍だ」
「あぁはい将軍様ねー。ところでさ、ここから出してくんねぇかな?」
「馬鹿か?お前は。お前はこれから、護送車に乗せられ、王国の地下牢にぶち込まれる」
護送車?地下牢?俺ってどんだけ重要なんだよ......まさか大陸一つ支配したのもうバレてる?
「はぁ?いや待てよ。俺の仲間は何処だ」
「あいつらは既に王国に連れて行った。恐らく地下牢だろう......」
「罪の無えもんまで地下牢行きかよ」
「罪の無い?ハッハッハ!お前はことごとく馬鹿の様だな!罪人なんてどうでも良い。怪しい奴は地下牢に、王様の気分次第で処刑だ!」
はい来たまた面倒な王様。ったく面倒くせぇ......この大陸では、どんな事が待って居るだろうって期待膨らませてたのに、また王国騎士に王様関連かよ......
っていうか、馬鹿馬鹿うるせぇな!確か、全て仲間は王国に連れて行ったって言ったよな?地下にいる武もか?
「ちょっと仲間に連絡して良いか?」
「あぁ?いい加減にしてくれ!仲間は全員王国に......」
「あ、武?今何処にいる?やっぱり見つかってねぇのか。良し、王国に突撃するつもりで起動してくれ」
武はどうやら離脱車輪起動部に孤立していた様だ。ククク......始めの標的は決まりだ!王国に派手にかましてやれ!
「今何をした?なんだそのプレートは......」
「我が魔王軍を舐めてもらっちゃあ困るぜ!」
「魔王だと......?そんな馬鹿な......」
将軍は、俺の言葉を聞いて、苦笑いをした。
そして突然地響きが起こり、どうやら離脱車輪が起動した様だ。
俺は、収容所の小さな窓に身を乗り出して、外の様子を覗く。
「な、何事だ!外だ!外に出ろ!」
港に隣接していた魔王国は、港に上がり、大陸を破壊しながらもゆっくり上陸し、完全に上陸しきった所で一気にスピードを出す。
離脱車輪は、港や建物諸々破壊し、俺の方へ向かって来た......
やばい!潰されるッ!
俺は咄嗟に避けるが、外に出て行った将軍は巻き込まれた様だ。悲惨な断末魔が聞こえてくる。
「うっひぃ〜ありゃ終わったな......さぁて、次の魔王軍の目標は、全大陸の制覇だ!ガハハハ!」
と、離脱車輪が凄まじいスピードで王国へ向かう中、俺は、途方の夢の様な目標を立てた。
そして、俺の目の前を猛スピードで走り抜けた離脱車輪を追いかけ二時間後、ようやく王国に到着した。
ふっ、今や王国はボロボロに崩れているだろう......そう思って俺は王国を見上げると、王国は完全無傷だった。
あれ?離脱車輪はどこ行った?
俺は王国周辺を見渡すと、離脱車輪は、丁寧に王国のすぐ隣に止めてあった。
ほ、ほう......?まぁ、良いか。王国に突撃するつもりとは言ったが、まぁ、「つもり」だしな。
さて、武は今何処にいるのやら......
俺は武にまた連絡する。
「お、武?今何処にいるんだ?」
「おう!魔王か!いや〜この王国は良い所だな!活気もあって人がいい人ばかりだ!まるで俺のいた世界を忘れてしまいそうだ」
「おう!どうやら観光を楽しんでいる様だな!ついでに仲間も助けてくんねぇかな?」
「おう。用済んだらな」
............。ってそうじゃねぇ!お前は此処に何しに来たと思ってんだあぁあ!
ったく、今助けてやるからな......。
俺は王国の大門を叩く。すると、奥から声が聞こえて来た。
「何者だ。今は、まだ開門時間では無い。何か急用か?」
「いや、隣に止めてある船の搭乗員だ。此処から誰か入らなかったか?」
「あぁ、お前か、話は聞いている。中へ入れ」
すると、大門では無く、その連絡用の扉が開き、中に入れてもらった。
話は聞いているって、どう言う事だ?港から情報が伝わるの早過ぎ無いか?
「良しお前、ついて来い」
「お、おう......」
全身鉄の鎧を纏った兵士は、俺をある場所に案内する。表情は無表情で、何処へ行くのか聞いても、答えてくれなかった。
しばらくお互い何も話さず、俺は、兵士の後をつけると、王城へ裏口から入り、地下への階段を降りる。
嫌な予感しかしないんだけど、大丈夫か?これ。
階段を降り終えると、見えたのは鉄格子で区切られた部屋が並ぶ廊下だった。
どう見てもこれ例の地下牢だよね!?凄え大人しくついて行ったけど、すんなりここまで来れた兵士も驚いてるんじゃねぇかなぁ。
そして、兵士は一番奥の鉄格子では無い、重厚な扉を開き、『此処がお前の部屋だ』と言って、俺の背中を押して、勢い良く扉を閉めた。
「・・・えーっと?これはどう言う状況だ?おい!さっきの兵士!此処は何処だ!」
俺は背中を向けて去って行く兵士に声を掛けたが、相変わらず何一つすら答えてくれなかった。
マジで俺が何をしたと言うんだ?
さて、脱出するか......。
俺が階段を降りた時は、結構長い螺旋階段だったから、この地下は深いんだろう。
そして、俺のいる部屋はどうやら扉もそう簡単には開きそうに無いが、天井、壁、床も、頑丈な鋼で作られており、叩いても鈍い音で向こう側には、空洞一つすら無い様だ。
ひぃ〜!確か港の将軍が、魔王の名に苦笑いしてたけど、あそこで魔王を名乗ったのが不味かったかなぁ?
まぁ、今回の王国では、穏便に済ませる気は一切ない。武も言っていた通り、活気があって人が良いらしいなぁ!?
だから、世界征服という目標の前に、俺はこれから、此処を新たな拠点にする!
さて、どうしてやろうか......?
そう脱出方法を考えていると、入り口の方から何者かの足音が聞こえて来た。扉に空いている穴から外を覗くと、緑無地の男が見えた。
すると男は俺に声をかけた。
「また会ったな魔王よ......」
「誰お前?」
「ぐっ......もう顔さえも忘れたか!ここの将軍だ」
「あー、車輪に巻き込まれた奴か。よく無事だったな」
「ふっ、鎧の耐久値とHPは別だからな!」
どこぞのオンラインゲームを思い出す設定だな。
「そりゃ良かったな。んで将軍様が何の様だ?」
「あの大きな車輪が港を潰した後、収容所から脱出し、王国まで来たそうだな。しかし、何故お前は牢屋にいる?」
「門通ったら、兵士について来いって言われたから、そのまんま牢屋に来ちまったって訳」
「ふははは!やはり馬鹿の様だな!港をあんなに派手に潰しといて、王国の警戒が強くなるとか考えもせんのか!」
「いやね?騒ぎとかなるべく起こしたく無いじゃん?」
「穏便に行きたいと?それでも魔王か?」
「あぁ!魔王だ!面白い魔王だろう?」
「あぁ......全く、私達が憎んで来た魔王がこうもヘタレだったとはがっかりだ!」
「そりゃ悪かったな」
「それで?何かして欲しい事はあるか?」
して欲しい?なら牢屋から出してくれと言う願いが切実だが......
「今から脱出するんだ。手伝ってくんね?」
「却下だ!ではさらばだ」
ですよねー......まぁ、良い。脱出する手立てはもうある。
随分前の話だが、一度この様に王国騎士に捕まった事がある。そして俺は、そこでドラゴンを召喚した。
ドラゴンの召喚によって収容区画が半壊し、脱出は出来なかったが、騎士に大きなダメージを与えた事がある。
脱出方法としては、そんなやり方もあるが、ここを新たな拠点とするなら、やらない方が良い。
ならば、絶対に脱出できる、脱出しなければいけない状況を作って仕舞えば良いのだ。
この前、武を召喚した際、俺の召喚能力はあらゆる次元を貫いて召喚される事が分かった。
ならば、これを上手く使えば、ここの兵士を呼び出せるんじゃね?
と言う訳で俺は、召喚を始める。
『絶対的な正義を持ち、蒼き鎧を纏いし騎士よ、我の下で助太刀せん!』
ふっ、今回は召喚では無い。転移の『つもり』だ。上手くいくかな?
すると、何故か没収されていない持っていた武器で、引っ掻いて描いた魔法が光り出した。
すると、腕を組んだ緑無地の男が召喚された。
「............此処は?」
「誰お前?」
「魔王!?どう言う事だ!私は将軍だ!!数分前にあっただろうがッ!」
「おー!成功だ!鎧は着てねぇけど此処の王国関係者じゃねぇか!」
すると、突然俺は、将軍に胸ぐらを掴まれ宙に浮く。
「貴様......説明しろ」
「まぁまぁ、怒んなって!脱出を手伝ってもらおうかなって」
「無理だと言ったら?」
「此処にずっと閉じ込められる事になる」
「そうか......なら、尚更無理だな!俺は此処の鍵を持っていないッ!さぁ、どうする魔王?」
「ならもう一度呼び出す!」
俺はもう一度召喚する。
『此処の鍵を持ってる奴きてくれー!』
ふっ、何てシンプルな召喚方法だ!さぁて、誰が来る?
魔方陣が光り出し、また召喚されると、将軍が腰を抜かした。
「嘘だろ......?」
召喚されたのは、王族の服を着た、髭の生やしたお爺さんだった。
「誰だコイツ?将軍知ってんの?」
「コイツとは無礼な!王よ、この度は申し訳ありません!」
「んむぐぐ......んお?......ファ!?此処は何処じゃ!いや、夢か?ん?将軍では無いか、どうしたんじゃ?」
「王様かよ!?え?鍵持ってんの?」
「鍵?何の事じゃ」
「爺さん!此処は現実だ!そして此処は地下牢だ」
「......そうか地下牢か......鍵は持っておらん。金庫に保管してある」
おいおいマジかよ......
その瞬間、俺は壁に突き飛ばされた。
「貴様ァッ!王をこんな所に呼び出すとはどう言う事だ!」
急に態度変わったな。王をそこまで敬っているのか......
「いや〜鍵持ってる奴出てこねぇかなぁって思ったら、王様一応持ってるけど、金庫に保管してあるってね......これもう終わったかもしんねぇわ」
「なら看守を呼ぶと良い。きっと出してくれるじゃろ」
「王よ!なりません!この物は、我ら憎しき魔王ですぞ!」
「ん?ほほー、お主が魔王か......まるでそこらの青年にしか見えぬが......ま、ええじゃろ!看守を呼ぶぞ?」
このお爺さんも駄目だあぁ!俺が突っ込む事じゃねぇけど、最早ボケのレベルだろこれ!良く王様務まってんな!
そして、王様は外にいる看守によびかける。
「おーい、看守よ起きろ〜わしじゃあ、ここを開けとくれ〜」
外にいた看守は、ぐうぐうと鼾をかきながら寝ていたが、王の声を聞いて眠たそうに目を覚ます。
「あ、王様......?は、なんだ夢か......ぐがぁー......」
「夢では無い!起きろ〜」
「ふぅ〜ぐがー!」
「駄目じゃな、爆睡しておる」
諦めるなよ!此処から脱出するには、鍵がどうしても必要なんだ!
俺は、思いっきり扉を蹴飛ばす。
「オラァ!起きやがれ!糞雑魚がッ!」
「あ?んだとぉ〜?」
看守はハッと目を覚ましたが、まだ眠たそうだ。
「早くここを開けろ!じゃねぇと王様ぶっ殺すぞ!?」
「あ〜王様か〜、あんな年寄りどうでも良いや〜」
「今何と言った!?わ、わしを只の年寄りじゃと!?」
「よぉし、開けるぞ〜」
寝ぼけた看守は、すんなりと扉を開けてくれた。良し!逃げれる!と、その時、将軍にがっしりと肩を掴まれた。
「貴様は此処に残れ」
「ならいつでも召喚してやろう。また此処にぶち込まれたく無いだろう?」
「ならばその時は、お前を此処で処刑するまでだ......」
将軍は、声が低く目に光が無い。やべぇ、コイツマジだ......。外に出ればこっちのもんだぁ!
俺は将軍の手を無理矢理引き剥がし、全力で逃げる。
「ッ!待てええええ!!」
「あ〜!将軍!鼓膜が破れるわ!静かにせぇ!」
「黙れ!ボケ爺は、ここにいろ!」
「ボ、ボケ爺......」
そうして将軍は、鬼の様な形相をして、俺を全力で追いかけて来た。
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