白昼夢2

「な、な、なんやここ!?

うちが小学生のときに通ってた木造校舎やないかーい」


うちはさっきまで何を考えていたのか記憶を失ってしまった。

そしてそれにはくしをかけた景色の突然の変化に、

気が動転し腰を抜かしてしまった。


「木造校舎ってこんなにでっかかったか?

それにしても、随分身体を動かしにくいな。

走っても身体がなかなかついてこん感じや」


『バタッ!!』


「痛っー!

あまりに歩きにくーて、バランス崩して転けてもーたし!

もう、最悪や!

あれ?

・・・・・・」


この転けて泥だらけの見覚えのある小さな手。

そして、この低い目線。

服装も小学校の時の服だった。


「間、間違いあらへん」



うちは小学生低学年の頃の姿に戻っていた。



『キーンコーンカーンコーン♪』

昼休みが終わった。

すると、なぜか女の担任がどえらい慌てた様子で教室に入って来たんや。


「みんな、落ち着いてきいてね!

今学校の校舎に一匹の殺人動物が迷い込んでいるらしいの!

みんな、教室の窓、出入口の戸を閉めて

先生の指示に従って!

みんな先生の言い付け守れる?」


「はい!」


「なあ、殺人動物ってよ!

正義のヒーローとどっちが強いかな?」


「そりゃ正義のヒーローじゃない?」

うちらクラスの児童は一部の男子児童を中心に緊張感が無い。

だが、学級委員の女児児童がそんな男子児童に説教し、総じてうちらのクラスは全員担任の先生の指示にしたがった。



「わー!

本当だ!

殺人動物来たよ!」

クラスの何人かの男子生徒が教室の裏庭に面した窓を開け騒ぐ。


「みんなして見にいかないのー!!

さっき先生と約束したでしょ?

そこの男子、コラー!」


殺人動物は非情にも、確実にうちらの教室めがけて向かってきた。


そしてついにらうちらの教室の前まで奴はやってきた。

『バンバン!』

教室の扉は激しく体当たりされる。


「センセ〜イ!

このままじゃ教室の扉壊れちゃいます!」


うちは教室の扉の横の窓をほんの少し開け、奴の姿を観察した。


意外と小さくて、大人のネコくらいか。

そして姿はゾウガメそっくりやな。

首はキリンみたいに長いな。


『バキバキバキバキ』


そして遂に、教室の木製の扉は奴の怪力と体重でへし折られ、一歩一歩ゆっくりだが確実にうちらの元へと迫ってきた。


「ここは私が時間を稼ぐから、

みんなはその隙に窓から外に出て、他の先生の指示に従ってちょうだい。

いいわねー?」

担任の先生は自分を盾にしてみんなを庇ってくれようとした。


『グウェー!!』

すると突然、奴は口から紫色の粘り気の強い胃酸を吐き、先生に浴びせた。


『シュー』

・・・・・・

え?


うちは自分の目を疑った。


「キャ〜!!」

その一瞬の静けさの直後、

目の前でおきた一瞬の信じられない出来事をみた生徒はみな一様に絶叫した。

「え〜ん!」

泣き出す生徒もいた。


「生、先生が……一瞬で煙のように蒸発してしもうた」


「キャー!

鈴木くんまで消されちゃたよー!」


「おい、佐藤もいないぞ!」

そうやって、担任の先生を皮切りにクラスメイトのほとんどは奴の胃酸の犠牲になった。


「おい谷!

何ぼうーとしてるんだよ!

死にたく無かったらお前も来い!」


「う、うん」

うちと数人の女子は男子に庇われてなんとか教室から抜け出せた。

だが、うちらはそれから先どこに行ったらいいかわからなかった。


とりあえず、うちら生き残った仲間は校門から抜け出そうと作戦を考えていた訳がそれはかなわなかった。

警察の仕業かどうかはしらんが、

軍事施設にありそうな有刺鉄線で学校の敷地から出られんようにされてたんや。


「俺と谷はこっち、

お前とみさきちゃんはあっちな」


「了解」」

結局うちらは仕方なくバラバラに解散して各々隠れることにした。


うちはいつのまにか最後まで一緒に行動して男子ともはぐれてしまった。


「みんな、どこやー?」

気がつくと周りにはもう仲間の姿はどこにも無かった。

「マジでどないしよう!」


『ドスン! ドスン!』


「奴や! 」

奴がもううちのすぐ側まで迫ってきていた。


「あ、あそこや!

うちは今中庭にいる。

そして、中庭にはジャングルジムがある!」


もう迷っている時間は無い。

うちはジャングルジムに駆け上がって一番高いところまで登った。


「ふぅー。

お願いやー!、

うちのことは諦めて立ち去ってくれー!」

うちは強く目を瞑ると、そう心で強く念じた。

しかし、うちの必死の願いは届かなかった。

奴は非情にもうちめがけて大きく口を開けた。


「うえーん!

嫌やー!うちはまだ死にたくないー!!」

うちは此の期に及んでただただ泣きじゃくった。

そして次の瞬間、やつは大きく息を吸いこむと遂に、

うちめがけて毒液を吹きかけてきた。


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【登場人物】

•谷先生

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