母と休日を。My mother and a holiday.

野水 志貴

ロンドン no.1

母は無自覚なミステリー好きだ。アガサ・クリスティーかコナン・ドイルかと問われたら、クリスティーと即答する。

しかし、シャーロックホームズは別格らしい。

そんな母をイギリスのロンドンに連れ出そうと思い立ったのは、去年の事だった。

好きな物が集まっている場所、とぽつりとつぶやいたのだ。

その一言で、私は母をロンドンに連れ出した。

ロンドンに着いてまず向かったのは、キングクロス駅だった。

ファンタジー好きじゃなくても知っている、あのハリーポッターに出てくる駅。

改修工事後で映画そのままではなく、「違うじゃん。」と言っていた。

周りの子供達は、はしゃいでいたけれど。

「ここから魔法学校に行ったんだよ。お母さんならどこに行きたい?」

ホームにはおしゃれな電車が数多く、旅行客やビジネスマン、家族連れ、たくさんの人でにぎわっていた。

「日本には帰れないからねぇ。」

私は言葉がつまった。しょっぱなキングクロス駅に来て、もう帰りたいのか。

それならばと、私は母を次ぎなる場所へ連れて行った。

「ほら、パディントンだよ。可愛い。」

「本当ね、こんな像があるなんて。」

小さい頃、よくくまのアニメを見せてもらった。

その一つがパディントンだった。

パディントンのお店も見つけて入り、母は終始楽しそうだった。

このイギリスに好きな物が集まっている、という言葉通り、母の好きな物を見て回る旅が、パディントンから始まった。


ロンドンでは情景を大切にする心があり、どこを撮っても素晴らしい画になる所ばかりだ。

ビックベンが舞台になっている作品は数多い。私なら、ピーターパンを思い出す。母はどうだろう。聞きそびれた。

次はチャールズ・ディケンズのミュージアム。

母は私をクリスマス・イヴに産んだ事がどうやら気にいっているらしく、クリスマスには敏感だ。

クリスマス・キャロルも好きだと言っていた。このミュージアムは実際、ディケンズが住んでいたそうだ。

家具も室内もブリテッシュでおしゃれだった。

そして、必ず行きたいと思った場所へ。

ディケンズ、コナン・ドイル、オスカー・ワイルドが通っていたというパブだ。

母も私もアルコールは飲めないので、ノンアルコールを頼んだ。それにしても、本当に現代とは思えない雰囲気のお店だった。

セントポール大聖堂で少し休憩をとった。

普段、母は車移動なので歩き疲れたようだった。

まだ歩くの?と度々聞かれた。

レドンホールマーケットに出て、少し歩き、気になる所に立ち寄りながら、今日はホテルに向かった。

旅は長い。どこまでも。なにせ、帰国日はまだまだ先なのだ。

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