4-5 目指す目標
エイミーとリーナが洞窟の崩れかけている部分を治していっている。
俺とレオはそれを後ろでハラハラしながら見ていた。
「ふぅ……終わりましたぁ……」
「おつかれー……」
修復の作業が終わり二人が大きく息を付いた。
「一応の補強は終わりましたので、これで何とか崩れずに済むと思います」
ぐったりとエイミーが座り込んだ。
「もしも無理そうならアタシとレオで無理やり大穴を空けて脱出しようかと思ったけど、これなら大丈夫そうね」
「二人ともお疲れ様」
「ほんと、疲れたわ」
レオの言葉に「ん~」とリーナが大きく伸びをした。
「エイミーもお疲れ」
そう言って俺は座り込んでいるエイミーに手を差し伸べた。
「はい、無事になんとか……あれ?」
俺の手を掴んで起き上がろうとするも、足に力が入らず立ち上がれずにいた。
「すみません、安心したら腰が抜けちゃったみたいで……」
恥ずかしそうに笑うエイミーを見て、俺も横に座る。
「別に良いさ、俺達は勝ったんだしな」
「そうですね、少しだけ休ませていただきます」
そう言ってエイミーはこちらに寄り添うように体を寄せてきた。
ドキッとなり避けようとも思ったが、休んでもらう為にもそのまま寄りかかって貰う。
疲れ切って深くなっている息遣いが、接している体から伝わってくる。
「二体も出るなんて驚いたね」
「どれだけここにエーテルが眠ってるのかってね。これは村二つどころか他にも手伝ってもらうような大きな採掘所になるかもね」
爆散しなかった方のエレメントの残骸を調べながらレオ達が喋っている。
どうやらこの洞窟の価値は思ったもの以上になりそうだ。
しかし、俺はそれよりも他の事に思いを馳せていた。
あの時、レオが最後の攻撃を仕掛けた時、俺はその様を振り返り見ていた。
最初にレオ達の戦いを見た時、俺は恐ろしい物の様に感じた。
その力に嫉妬し、その力を受け入れる事が出来なかった。
でも今は違う。今は真っ直ぐとその力を見ることが出来る。
嬉しかった。その力を真っ直ぐに見れた自分が。その力を持つ人が目の前に居る事が。
しばらく休んだ後、村へと討伐完了を知らせる為に帰った。
報告を聞き守備隊と作業員の方達が採掘の準備へと取り掛かる。
シエーナから戻っていたエドアルドさんは洞窟内のエーテル貯蔵量の予測値をリーナから聞き、その量を聞いて興奮を隠せずに居た。
図面と睨み合いながら村長達となにやら熱心に話しこんでいる。
どうやら商機はまだまだ上に登って行きそうだ。
俺達が村に戻った少し後にシエーナからも人々がやって来た。
「まさか、君を送り出した時は数年会えないものだろうと送り出したのですが、こんなにも早く再開するとは思ってもみませんでした」
キーンさんがそうエイミーに笑いかける。
「私もです。まさかこんなに素晴らしい事が起こるなんて」
「小さな巡り会わせが起こした幸運とでも言いましょうか、旅の始まりとしては素晴らしいものでしょう。これからも彼等と共にがんばって行きなさい」
「はいっ!」
心からの笑顔でエイミーが答えた。
日が替わり、洞窟での作業が本格的に始まっていく。
リーナとエイミーはそれの手伝いへと出て行った。
リーナはエーテルの調査、エイミーはキーンさんと洞窟の補修を行うそうだ。
その間に俺はレオに剣の稽古の続きをつけてもらう。
この前の指摘もあってか説明の仕方を変え口頭での説明が多くなったが、やはり途中で体が動き出してしまっている。
「レオの教え方は身振りと実践で良いんじゃないか?」
「でもリーナがそれじゃ解り難いって・・・それにリョウもそう思うんだろう?」
まぁ確かに解り難い部分はある。どちらかと言うとレオの強さに俺が付いて行けておらず、教わった部分を実践できていないと言った方が正しいのかもしれないが。
「レオが本気で俺を教えようとしてくれているのは、俺が一番解ってるさ。だから俺がお前の教えに付いて行ける様になれば問題ない」
「そうかな……」
「そうさ、それにちゃんと見て、直さなくちゃいけない部分は指摘してくれるしな」
そうは言われても、やはりレオは悩んでいるようだった。
でも俺は、俺に教えようと考えて縮こまっているレオよりも、その力を存分に振るい見本となってくれるレオの方が好きだ。
その姿に必死について行こう。そう思える姿を必死に。
「弟子は師を育てるものだと言うしな、解らない所とかあれば、これからは積極的に聞いていくよ。だからさ、別にリーナみたいな教え方じゃなく、お前の教え方で教えてくれ。俺はそれについて行くから」
「……解った。僕なりの指導の仕方はまだ固まってないから、解らない所とかあれば教えてね。少しずつ一緒に成長していこう」
レオは指導を再開していく。口での説明は少なくなったが、体はキビキビと動いていった。
そうだ俺はこれに追いつくんだ……何時か、絶対に。
その思いと共に一つ、レオに伝えたい言葉があった。
俺が目指していたものをレオにやって欲しいと。
だけどこれは俺の我侭だ。これは誰かから押し付けられてなるものじゃない。
もしもレオがその道へと進み、誰かがそれを称した時、その時がもしも来れば伝えよう。
「あっそうだ、リョウ!模擬戦をやってみないか?」
「え?別に良いけど、いきなりどうして?」
「やっぱり素振りや型の練習も大事だけど、言葉で伝え難い事は戦いながら伝えられると思うしね。練習用の木の剣が無いから今回は真剣のままで良いか」
「刃を剥き出しって危なくないか?せめて鞘を付けた方が・・・」
「大丈夫だよ。僕は寸止めするし、僕には当たらないから」
さらりとレオが言った。
「いや、でもまぐれ当たりとか」
「そうだ魔法も使って良いよ。リョウの戦い方を戦いの中で確立させていこう」
うん、あれだ、レオには微塵も悪気は無いのだろう。
事実俺とレオの間には天と地程の力の差があるに違いない。
だが、
「ぜってぇ当てる」
「ああ、来い!」
その後、レオの厳しい指導を兼ねた模擬戦を日が暮れるまで繰り返したが、俺は一度もレオに攻撃を当てる事は出来なかった。
夜になり宿に戻るとリーナ達も戻っていた。
採掘の準備は順調に進んでおり、リーナ達の仕事も終わったとの事だ。
この村を出発するのは何時にしようかと話すと、報酬とは別に採掘したエーテルを貰えるとの事だったので、あと何日かこの村に泊まる事にした。
「結構な量をくれるそうだから、アンタ用のマント作りも捗るってものね」
夕食後の話しも終わり、夜も更けて来たのでベットに向かう。
ベットに寝転び、ふと窓から夜空を見た。満点の星空が見える。
そうだ、明日は記念にもう一度、あの輝く洞窟を見に行こうか。
そんな事を薄っすら思いながら眠りの中へと誘われていった。
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