第8歩目!「合宿編②」


康宏を除いた5人は早速、5月の京都を探索してしていた。

京都の名所を巡る周遊バス券を購入した一行はまず、京都市の左京区を訪れていた。

京都がアニメのロケ地に選ばれる理由の最も大きな要因といえばやはり歴史的建造物の多さにある。

由緒正しく、それでいて風情を感じさせる街並みは様々な感情を映し出す場面にもってこいだ。


「ほー!これが下鴨神社!!さすが私の名前と同じだけはあるわね♡」

「うむ。おまえの名前は関係ないが、やはりここは何度来てもいいな。」

両手を広げ、何かスピリチュアルなパワーでも感じているかのような凛子と、静かに頷く裕美。

「へぇ。これは確かに趣がありますね。」

「でしょ!近くにはおいしい団子もあるヨ☆」

「拓海君はここが何のアニメのロケ地か知ってる?」

「もちろん!予習してきたよ。」

下鴨神社はアニメとのタイアップも行われており、地域おこしに一役買っている。さらには近年はライトアップなど、様々な催しが行われており、観光シーズンは連日盛況になる。

「よしっ!次はあの商店街だネ☆」

次に一行が訪れたのは下鴨神社から徒歩10分程の出町枡形商店街。

こちらも有名な某アニメの聖地として知られている。

古くから賑わい、人情味溢れるアーケード街だ。

「あ、見てみて!可愛い♡」

「あっ!これあれですよね!?」

凛子が素早く反応したのは某アニメのキャラをイメージした飛び出し坊やだ。商店街周りにはこうした隠れたスポットがあり、5人はそれぞれ写真撮影を楽しんだ。

「テラモッチウッマイですわぁ〜」

「遥はノリノリだね!ハハっ」

「ヤッさんもこればよかったのにネ☆」

一行が和菓子の名物豆大福を堪能している頃、康宏は絶賛睡眠中であった事は言うまでもない。

一日目の探索を終えた一行は、晩御飯の食材を揃え、別荘へと戻った。

「あぁーめんどくせぇ。これで良しっと。おっ、帰ったか馬鹿共。」

「やっさん先輩何してるんですか?」

「よく聞いたぞできた後輩よ。見るんだ!」

拓海の問いかけに気を良くした康宏は鼻を膨らませ、液晶テレビに向け、指を指した。

「わっ!懐かしい!ビーチちゃん可愛い♡」

「うむ、パーティーゲームとは良いではないか。しかし、面倒臭がりのお前がこのような用意とは、どういう風の吹き回しだ?」

「ゲームをやる為には面倒なんて気にしねぇよ。面倒臭かったけど」

康宏はパーティー型のテレビゲームの準備をしていたのだ。画面には「マリ王遊戯会」の文字が映されていた。

「でも先にご飯ですよね?私お風呂にも入りたいです!」

「それもそうだネ☆やっさん、ドンマイ!」

遥のごもっともな提案に康宏は部屋の片隅で膝を折って座り込んでしまった。

川の流れを聴くことができる、露天風呂の浴槽に浸かる、遥、裕美、凛子の3人。旅の疲れを癒していた。

「ふわぁ〜。疲れましたね。それにしても裕美さん。すごいですね、露天風呂なんて。」

「気にせず是非ともゆっくりしてくれ。凛子、お前は胸を見るな。殺されたいのか。」

「いやぁー、二人とも可愛いサイズだなって。私肩凝って仕方ないのよぉ。」



そんな中、男性陣はというと、康宏と光国は制止する拓海を振り払い、脱衣所に侵入。風呂場を覗く。準備が万端だった。

「駄目ですって!二人とも!殺されますよ!」

「後輩よ、これは男のロマンだ。乳女は乳だけは有能だ。一見の価値ありだ。」

「そうだよネ☆俺っちは小さいのも好み!キラッ☆」

そして、約束通りなのだろうか、3人の後には凛子がハンマーを振りかぶっていた。

「おまえ達、閻魔様に舌抜いてもらえ♡」

「ちょっと待ってください!僕は止めましたよ!わぁぁぁぁ!」

3人はしっかり制裁され、情状酌量の余地があった拓海以外は夕飯抜きという事になり、二人は泣く泣くコンビニへと足を運んだ。

「しかし、光国。これからどうするんだ?お前。」

「まぁ、なんとかなるよ。今年は期待の後輩も入ったし、俺っちが居なくても回るよ。」

二人は缶チューハイ片手に渡月橋を歩いていた。

夜風が心地よく、軽いアルコールが少しだけ気持ちを高揚させる。

いつになく真剣な話をする二人だが、他の部員は話の内容は知る由もない。

「そうか。まぁ一応こういうのは恥ずかしいけどお前とは一蓮托生だ。」

遠くを眺めながら格好をつけた康宏だが、スマートフォンのピッという音に気付く。

「録音完了☆再生だネ☆」

「こらっ!お前!消せ!」

運動音痴の康宏の攻撃が光国に当たるはずもなく、康宏は転び、缶チューハイを零してしまった。ハンカチを渡し、手を差し伸べる光国は未来を予測するように再び語り出した。

「それに、後輩はもう1人増えると思うよ。」

「なんだよそれ」と康宏は立ち上がり、二人は別荘へと戻っていった。

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