第3話「世界が残酷な刻印をあなたにしるした」

あなた。

あなた 。


愛おしい あな た 。


わたしは、ようやくあなたとひとつになれた。

あなたはわたしであり、わたしはあなたである。

そう。

子供のころのように。


世界が残酷な刻印をあなたに印し、わたしとあなたの間を引き裂いた。

今ではその世界があなたを破壊したその刻印すら、わたしのものである。

ああ。

わたしは幾度呪ったことか。

なぜ、世界はあなたを選んだのだろう。

なぜわたしではなく。

もし選ばれたのがわたしなら、こんな孤独をあじあわずに済んだはずなのに。


でも。

もうわたしたちは、ひとつのもの。

あなたの瞳をとおしてわたしは世界を見ている。

足元には、ひとつの死体。

それは、かつてわたしであったもの。

いまは、ただの抜け殻。


ああ。


わたしはあなたに、話さなくちゃあいけないね。

どうしてこうなったのかを。


それは、ひとつの本との出会いから始まる物語。

その本の名は、こういいます。


「土曜日の本」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る