The LITHOS(神珠物語)

クロノス

≪第0章 王珠の章≫

宝石の神リトスが作った星『リトス』。


この星には【王珠】と呼ばれる、不思議な宝石が存在する。



神の心臓の欠片から作られた【王珠】と呼ばれるものだ。


【王珠】には、神の戦いの記憶が封じられていた――。



神は、いくつかの種族に【王珠】の力を与え 国を治める力を伝えたと云う。



親から子へと、【継承】と言う形で 受け継がれて行く【王珠】の力。


【王珠】の力を与えられた者は、神が使用していた力の一部を使用することができるのだが――


その力は、まさに神がかった力と呼べるものだった。



大地を砕き、海を割り、空を裂く。


全ての力を結束すれば、この星さえ壊せるほどの 神に近い存在になれると言われていた。



僕は、手にしていた アンティーク調の古い本――……


『リトスの書』を開いた。



リトス歴 L.G.3440――……現在。


神が消え、ヒトが星を治めた日から 3440年が経過していた。



3440年と言われる月日が示すこと。


今、この星リトスでは、どんな高度な文明が築かれているか想像できる?


だけど それは、大きな間違いなんだ――。



神から授かった【王珠】の力を継承したことで、ヒトは変わった。



この星リトスで最も弱かった種族だったんだけど――


最も強く欲深い生命体に変わってしまたのだ。



わずか200年足らずで――……


ヒトの文明が崩壊してしまったのだから。



【王珠】と呼ばれる大きすぎる力を持ったヒトは、より大きな欲を欲するようになり――


平和な世を壊してしまったんだ。



それから数千年と呼ばれる長い月日を繰り返して、わずかに残った末裔達が 今の『リトス』の世界を作りだしたんだ。



散り散りになった【王珠】の力を再び手にしたことで、新たな王となった者達が収める世界――。


平和に見える今の世も、徐々に均衡が崩れてきつつあった。



力を手にしたヒトは、新たな欲を生む。



【王珠】の力を全て集めて、神に近い存在になろうと考える者も居るくらいだ――。


 

力目当てで【王珠】を奪おうと考えるものは多いのだが、王珠継承には次の制約があった。


1. 王珠は、直系の血族に継承すること。


2. 王珠継承の儀式は、血族が行うこと。


この制約を守らずに王珠の継承を行った場合は【王珠の強制継承】となり、新たに王珠を継承した者の精神が破壊されると伝えられているのだが――。



碧色に輝き始めた『リトスの書』。


少しずつ浮かび上がって行く『神字』で書かれた文字達。



また一つ、新しい物語が始まったようだ。



その結末は――……。



僕は、ゆっくりと本を閉じる。



「行こうか、クロノスターリオン」


僕の呼びかけに応じて、傍で眠っていた『蒼鳥の王獣』が目を覚ました。



その 巨獣の背に跨り、僕は目的地への言葉を伝える。


「ドラクロアまで飛んで――」



無言のまま頷いた彼。


次の瞬間に、額に風を強く感じた。



羽織っていたローブが頭から大きくめくれ上がって、僕の金色の髪の毛が 一定方向に向かって大きくなびく。


一瞬の無重力感を体に受けた後で――


僕らは 闇夜に飛び立った。



空には 紅色の満月が光輝き、地上には薄紅色の光が怪しく注ぎ込んでいた夜だった――。

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