三月十八日、十九日

 十八日。

 ぬくらかなは桃に金に、花のいろを反射して庭に映す。遊びまわるこどもらのほほうぶにもれる風は、いのちを愛おしむ女精めがみのおそで


 十九日。

 夢。なにか師のようなひとに従ってたまつなぎをする。

 これは玻璃はりの珠をひとりのひもに通していってお数珠じゅずをつくるというもので、色つきの、大や小やのよくけたのを指でつまんでは、しなやかなひもすべらせる。

 「珠同士、似ていてもそれぞれに名前がある」とそのひとが言う。「その先端のが翡翠ひすい、こちらが若竹。その手のは白菊、あちらが夏雲、……」

 珠はおのおの音も持っているらしく、こすれあうと、しろん、かろん、と鳴る。ちょうどよい組みあわせを繋いでいくことで、よいお数珠ができあがるのだという。

 ……完成を見ずに目覚めたとこで、指のあいだに転がした珠いろの、珠鳴りの感触を探した。

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