三月一日、二日

 一日。

 雨粒が草のうえに残って光る。春の精はわずかな晴れ間にあたりを跳ねまわっている。かれらの足先が触れたところから細かな花の群れになる。

 たとえば爽やかな、青い星の瞳、オオイヌノフグリ。精たちも腰掛けようか、三階草はホトケノザ。


 二日。

 フキノトウ、ヒマラヤユキノシタが寄り添うように咲いている。水辺の石の隙間から伸びて、丸く美しい影を落とす。

 そのうえには生りっぱなしの文旦ぶんたんと、なんの桜か早咲き、村の一角は早々とにぎわう。

 いくもの布を抱き込んだような、変わったすがたの椿どのは紅卜伴べにぼくはんというらしい。

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