八月二十日

 今朝もすずしい風。遠くの山にかかる雲だけ湿しめってだるそうに見える。

 昼に小雨。すこしあつくなる。夏はこうして思い出したように息を吹き返しながら、ひと雨ごとに彼方かなたの空へとっていく。

 夜。もみつぶのかたちをした月が雲のあいまを転がる。がちゃがちゃ虫がうるさいほど鳴く。


 以下、去年(二十九年)八月十五日の日記より。


 杉山の屏風びょうぶに薄雲の

 ここは黄金こがねたたみ部屋べや


 つばめらのかしこ深青あお

 残夏を切る

 振り子時計になっている

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