六月二十七日

 昼。雲の多い青空。風も強い。わりにあそこの雲の一団いちだんは、かたちを変えることなく流れてくる。まるでそういうふうにさいしょくされた天幕てんまくででもあるかのように、山の向こうから引き出されてくる。


 夜。灰青色はいあおいろかげびた雲がいくにも横たわる。かくされるのをのがれた月は東のそらのぼっていく。満月間近のあかるさ。

 川水があんきょを転がる音と、かすかなひぐらしの声。なに虫かも鳴いている。


 湿しめったすずしい風。たまに水をなくして、土がむき出しになった田は独特どくとくにおいをさせる。

 一日のつかれを受けとめる青いいねのそよぎ。日ごと、様々さまざまなものをかべてくれた水面みなもはすがたを変えて、どこまでもけていける草原のようになった。

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