六月十二日、十三日

 十二日。

 散歩に出られないので空想の道をいく。夜のけいぎょがんせきがひかる河原かわら。くるくると浮かぶのはほたるいしきよい水の音がすずしい。

 横の林へと入ると、なつ茱萸ぐみがみんなでこちらを向く。星かげを頼りにないしょのはなしをしていたらしい。……見つめあったまま通りすぎる。

 視界がわるくなってきたのでふところから煙草たばこかんを出す。一本の先端せんたんを千切ってくわえ、強くうと火花がってめるようになる。

 明るいので夜道にいい。けむりばくけにもなる。……


 十三日。

 南天の花が咲いている。と思ってながめていたら、若いバッタが花をんでいた。あまり大食では困るけれども、なんとなく可愛い気がして追い払えない。

 つばめの一家もいろいろで、随分すいぶん大きくなって、しきりに飛行の練習をしているところ、まだやわらかな黄いろの口ばしが見えるところ、新しい巣を作るつもりか、どこを運んでむところ、微笑ほほえましくある。

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