四月十日

 道むこう、南の田におすきじ。遠目からでもわかるつやよいからだをふるって、けんけんと。ここずっと聞いていた声の主。ととと走って菜の花畑にかくれてしまう。

 道ぞいに歩く。たんぽぽはみんな綿毛を飛ばしてしまって、くきのさきに台座だけを残している。腰かけるか、踊るのにちょうどよさそうな白の台座。


 ぼちぼちと水の入った田んぼが多くなる。なみなみしているのを見ると、水に揺られてどこへでもいけそうな気がする。ほんとうは四角い田んぼなのだけれども。

 水面近くをセキレイが飛ぶ。なにを探すか。尾がれように。

 つがいだろうか、空を飛んでくる二羽のかもあざやかなのと茶けたのとが上手に着水する。すぐにえさあさり。夢中になって泥にくちばしを突っ込むので尻がふりふりと動く。


 氏神うじがみさんのほうへと回る。湧き水からできている川に、ぽつんとかにがいる。そういえば日曜にも田のわきの水路で見た。

 笛の音をまろばす小鳥。ヒワよヒワ。羽に菜の花をたたんで持っている。どこへ行こうか届けよか。

 鈴蘭すずらんのようなちいさな花がたくさん吊ってある木は灯台躑躅どうだんつつじ。この辺りはいつもなにかしら花が咲いている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る