第47話 『元祖』 その12

『じゃあ まいやら らーめん』が、ついに目の前に現れたのです。


「ううん・・・こりゃあ、・・・ラーメンだ。」


「明らかに、ラーメンだねぇ。」


 お嬢が追認しました。


「らーめんぞな。」


 スワンも同意しました。


「見た目、特に変わりはないなあ。」


 これは、ぼくです。 


「スープですぜ。主様。スープなんだな。ほら、これが秘密のスパイスさ。ここのいわゆる神様がね、インドから持って帰ってきてくれたんだ。あの人は、聞いた噂では、幽霊たちに、屋上のさらに上の、あの『ビル』に連れてかれた、らしいですぜ。」


 店主さんが、茶色のやや大きめの瓶を持ち上げて見せてくれました。


「中身は、秘密ですぜ。ただね、もう残りがだんだん少なくなってきましてねぇ。新たに入荷する目途はないしね。いつまで持つかは、あやしいもんですぜ。まあ、あと1年か、2年か。お客さん次第ですな。『主様』が、みごと勝利を納めたら、もう、こんなものも、必要なくなるだろうしな。」


「なんかあ、突っ込みどころ満載の、おかしな話だよなあ・・・おあああ、あの鳩さんとか、カラスさんとか、つばめさんとかが、ロボット警官さんたちに何か撒いてる!」


 ぼくが、画面を見ながら言いました。


 実際、鳥さんたちが、ロボット警官さんたちめがけて、なにやら分からない液体をふりかけておりました。


 しかし、すぐにどうなるという感じでもありません。


 また、他にも、そのロボット警官さんたちめがけて、攻撃してくる一団があったのです。


「ああ、あれは、反体制過激派の『青いモールのタカ』ですね。正体がよくわからない100階以上の上層階の集団ですが、人間とロボットの合体集団で、主に非常勤店員さんと、一部難民によって構成されているらしいとしかわからない。」


「マスクしてるから、顔が分からないねえ。」


「旗色良くないぞな。ありゃあ、完璧捨て身ぞな。もう、死ぬ気でやってるぞなもし。」


 『青いモールのタカ』のメンバーは、精鋭ロボット警官のまえに、次々に破壊されるか、ロ-ストにされるかしてゆきます。


「のんきに、ラーメン食べてる場合じゃないぞな。きっと。・・・いますぐ、行くぞな、『主さん』。」


「そうさね、あんた、出番だろ。91階の『主様』さあ。」


「そうね。ほら、さっさと食べて、上階にあがるのね。ここは闘いの時ですね。」


「おおお!とうとう、その時が来たか!!」


 これは、あの御老人です。 


 みんなにそう言われると、『やだ!』と言えるわけがなし。


 ぼくは、『じゃあ まいやら らーめん』を、一気に食べました。


 もう、やけくそですよ。


 しかし、・・・『やた!! 見よ! みるみるパワーがみなぎる!そうして、ぼくは、空を飛ぶのだ!・・セベリウム光線だ!』 なんて訳はないのです。


「効果が出るには、15分くらいかかる。お代は貸しでいいよ。さあ、出てッた、出てッた!」


 ぼくらは、店から追い出されました。


 追いだした店主さんと、御老人だけが、その場に残ったのであります。


「よっしゃ。『91階の主様』、行っといで! 闘いだよ!」


 お嬢が、まるで、他人事のように叫びます。


 そこに居合わせた、周囲のたくさんの人たちからも、声が上がりました。


「あああ、『91階の主様』だあ、ついに闘いに行かれるのだ! うんじゃあ まいやら。なんのことやら!」


「おおお! 主様が出陣される。ありがたやありがたや。うんじゃあ まいやらあ なんのことやらあ。」


「きゃあ! カッコいい! 主様が闘うんだあ! きゃあ! 主様あ! うんじゃあ まいやら! なんことやらあ! 闘え! 主様あ!!!」


 もう、そこらじゅうが大騒ぎです。


「91回の主様を、闘いに送ろう! 皆、歌え! 闘いの歌を! 『盃をもて、立ちあがれ! 闘いだ、我らの主様は無敵のやぐら。戦え主様~!!』


「そんなうた、いつの間にできたの?」


「歌というのは、そうしたものですね。さあ、ぼくが援護するから。超高速エレベーターで、上がりましょう。ほら、君たちも、当然来るのね。」


 どこから持ち出したのか、幟の旗が、多数、回りで翻ります。


 『世界一!』


 『特大セール!』


 『今世紀最大大売り出し中!!』


 とか、まあ・・内容はまちまちですが。


 ぼくは、こうして、周囲のその強大な圧力で、無理やり出陣させられたのでありました。



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