第35話 『革命』 その16

 ぼくとキューさんは、『別室』に案内されました。


 『演奏会』や『劇の公演』とがが行われる市民ホールでも、合唱団とか、わき役とかは『大部屋』に入りますが、主役クラスの方や、ソリストとか指揮者さんは個室になります。


 ぼくは『主役クラス』に分類されたのは初めてです。


 お手拭きが用意され、お盆に乗ったお茶がやって来ました。


「ども、ありがとうございます。」


「いえ、主様、『なんのことやら』。」


 持ってきた女性は、明らかに緊張気味です。


「はあ、これまた、ども。」


 そのお茶を運んできてくれた方は、無理やり、こにこして出て行きました。


「さっそく情報が走ってるね。」


 キューさんが言いました。


「ま、ここは、ここだから。」


「でも、もう、会場の外にしっかり出てるね。」


「はあ・・・」


「モールのなかは、どうやら、もう、別世界になってるね。」


「なぬ?」


「ぼくの得た情報では、モール全体に、高濃度のガスが充満してるね。しかも、さっきの集会は館内中継されていたようなのね。今は再放送されてるね。」


「ななな、なんと。誰が、そんなことを?」


 キューさんが館内テレビのスイッチを入れました。


 たしかに、さきほどの情景が放送されているのです。


「おわわ。これは、また・・・・」


「今のところ、そこは、まだ、わからないね。でも、多くの人が洗脳されたね。あのガスは、濃度が低いと、一時的に軽い妄想状態になるだけだけども、濃度が高くなると、意識自体に永続的な変化が起こるね。会場のガス濃度も異常に高かった。通常の儀式用ガスに、外から供給されたガスが加わったみたいね。だから、よけいに大騒ぎになったのね。このモールは、あなたの世界になった。もちろん、あなたと同じ薬を使っていた人は、例外ですね。」


「じょじょ、冗談じゃない。じゃあ、外にいた人とかも、みんな、しらふじゃなかったわけ?」


「そうですね。『普通にするように』条件づけられていただけね。」


「え~~~~!!!」


「あなた、ここでは、もう、『神様』の次に偉い『人』ですね。当然『中央警察』からは、狙われるね。後戻り不可能ね。」


「おごわ~~~~~~~!!!!」


 しかし、ぼくはふと疑問に思いました。


「でも、それだったら、伝言ゲームの意味はない?」


「そこは違うね。どうやら、時間差中継されたね。最後のあたりは、うまくカットされたようね。ロボットが破壊されたところで、劇的に終了になったね。最後の部分は、邪魔だったようね。」


「ううん・・・・・なんか微妙。作為的なことを。でも、なんか納得しにくいなあ!」


「だれかが、うまく仕組んだことは、間違いないね。でも、逆に、あなたに疑問を持たれることになったね。ぼくも、結局は、乗せられたわけね。」


「ううん・・・・・・・・・???誰?」


「どっかの『組織』ね、どれかは、まだ特定できないね。お嬢のところかもしれないね、でも、ここの組織はかなり多数に及ぶのね。」


「調べてよ! 元に戻そう!」


「あい。」


 キューさんは、そう、返事はしました。


『やっぱ、なんか、怪しいなあ・・・・・』


 ぼくは、ふと、そうは思ったのです。




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