第229話 李儒(理樹)と内気な姫殿下【援軍】(10)

 只悪戯に埴輪の巨人兵を刺激するのみ。


 そう。傍から見て確認をしても大変に仲良く見える。李儒(理樹)と弁姫殿下へとヘイト値を只悪戯にあげていくのみなのだ。


 と、なれば? 埴輪の巨人兵……。


 元々、先程デリート。天に召された。と、言っても。この世界のあの世や天界と言う物が存在をするか、どうだかはわからない。この場にいる戦姫自身が、李儒(理樹)が産まれ育った世界の神仏。神。女神。天女。天使。精霊と呼ばれる。呼ばれている者達と変わらぬ存在だから。埴輪の巨人兵は神、女神を倒しデリートさせることに成功をした異形の物。神をも恐れぬ生物だと言える。


 そんな恐ろしい魔物を創世させたのは、女神のほんの些細な、女性らしい嫉妬心……。



 そう。先程自分自身が創生した魔物にデリートされてしまった、袁術お嬢さまの李儒(理樹)への淡くて甘い恋心。俺嫁としての、弁姫殿下への嫉妬心が生み出した。女神、戦姫さえも恐れぬ魔物。埴輪の巨人兵だから。自身の足許へと果敢に攻撃──。


 自身の両手で握るグレイブ、戟を振るい。落とし。叩き。強打を。


「うぉおおおっ!」


「やぁ、あああっ!」


「くそぉ、おおおっ! 固ぇえええっ!」


「何て固い。固いの、だぁっ! この化け物は……」と。


 声を大にして荒々しく叫び。最後は嘆くように言葉を漏らす。


 でも、挫けずに。


「えい!」


「やぁっ!」


「とうー!」


「うりゃ、ああああっ!」


「わりゃあああっ!」と。


 威勢がある。覇気のある声を吐きながら粘り強く。埴輪の巨人兵の足元を攻撃する。続けている。夏候惇と華雄将軍達二人から。埴輪の巨人兵は仲の良い二人。李儒(理樹)と弁姫殿下へと嫉妬心をあらわにした女性──。


 先程デリートした袁術お嬢さまの魂が乗り移ったかのように、嫉妬心をあらわにしながら。


「ギャァ、アアアッ!」、


「ピヤァ、アアアッ!」と。


 叫び。咆哮を吐き。この場の地をぐらぐらと小地震。地鳴りをさせながら。李儒(理樹)と弁姫殿下の二人を耕そうと鍬型の戟を振るい掲げ──。叩き落とすように、下ろしてきたのだ。


 だから二人は! 李儒(理樹)と弁姫殿下の二人は危ない。危うい(あやうい)。危機になる。なってしまう。しまうのだよ。


 だって先程迄、李儒(理樹)と自分自身への攻撃を魔法障壁で防いでいた弁姫殿下なのだが。猪突猛進を繰り出す。単独突撃を決行し。先程消えた。この場からデリートした二人の戦姫の後を追おうとした李儒(理樹)を取り押さえる為に、彼女は魔法防御。障壁を展開──張っていない状態なのだ。今の弁姫殿下は。


 だから二人も仲良く。先の二人。李儒(理樹)と紀霊将軍の後を追う。デリートする立場へと変化。変貌したから。


「李儒(理樹)のチビ逃げろぉおおおっ! 今直ぐにー!」


「弁姫様ぁあああっ! 直ちにお逃げくださいー!」と。


 埴輪の巨人兵の足元にいる二人。夏候惇と華雄将軍から、二人はその場から直ちに逃げろ。逃げてと嘆願が飛ぶのだが。どうやら間に合いそうもない。


 李儒(理樹)は泣いている目を大きく開けて、鍬の落下を呆然と見ているだけで。そんな様子の彼を後ろから抱きつき取り押さえていた弁姫殿下も鍬の落下速度を見て、「ふっ」と微笑み。覚悟──。


 姫さまは死の覚悟を決め、李儒(理樹)の背から。愛おしそうに甘え始め。二人で仲良くデリートをする覚悟を決めたようなのだ。


 だからこの話。物語は、李儒(理樹)と弁姫殿下二人の死によって、バッドエンドで幕を閉じるみたいだ。



 ◇◇◇◇◇

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