第155話 李儒(理樹)と内気な姫殿下【三】(13)

 まあ、このような、何とも言えない会話を二人の戦姫は小声で、『ヒソヒソ』としているようだ。


 でも最後にオークの鎧武者、戦姫が小声で囁けば。己の髪の色と変わらぬ輝きを魅せる。黄金色の派手。派手しい甲冑を身に纏うエルフの少女が、己の持つしなやかな指先──。


 それも親指を自身の艶やかに彩る唇へと運び、ネイルペイントで彩りされた。手入れをされている親指の爪を『ギュッ』と、口惜しそうに、己の前歯で噛みしめ。噛みしめながら。


「口惜しい……」と、小声で呟けば。


「ええ、確かに……」と。


 紀霊からも言葉が漏れてくるのだが。彼女の主である金髪碧眼のエルフな姫様。お嬢様なのかはわからないけれど。大変に高級。お値段の高そうな防具を着衣しているようだから。高貴な身の上、立場の者であることは間違いないエルフの少女……。彼女は自身の親指を噛み始めると。


「…………」


 こんな感じで怪訝、口惜しそうな顔をしながら沈黙……。何かを思案しているようなのだが。


「いくぞ! 曹仁と悪来。僕は董卓の許へと戻る。二人は出陣の準備ができ次第、ここで待機。惇から緊急連絡がこないか見て、見張っていてくれ。頼むぞ!二人とも……」


「はい。分りました。姉上……」


「あいあい、頭。まかせてくれ。儂と曹仁殿が上手く。臨機応変に対処するから。頭の李儒(理樹)殿の事は、心配をしなくても大丈夫。大丈夫だから。安堵していてくれ。頭……」と。


 最後に悪来典韋の声が、台詞が終わると。紀霊の主さまは、己の華奢爪を噛む行為をやめて顔を上げ、口を開くのだ。


「そうかぁっ? この手ぇ。この手がありましたわぁ。この手を使用すれば、私(わたくし)もあのひとに近寄ることが可能な上に、恩を売ることもできますから。あのひとに取り入って、曹操のように出世……。近衛隊を除籍、辞めて、己の兵を持ち、一軍の将として行動をすることもができますから。もっと、もっと上を目指すことが、私(わたくし)も可能になりますから。この手、この策を使用しましょう」と。


 紀霊の主さまは大変に嬉しそうに。もう、それこそ? 『私(わたくし)は、満足。満足ですわぁっ』と、でも言いたい感じの歓喜をあげるのだ。


 それも大変に小声で、自分達二人のことを、最後まで気がつかずに。影、闇に隠れ身を潜め、聞く耳を立てていた二人に気がつかないまま、お馬ちゃんに跨り通り過ぎていく。何処か抜けているお嬢さま達三人の姿──。横から背へと変わっていく姿を、己の唇の端を吊り上げ『ニヤリ』でっ、その後は、『ヒヒ』と、悪しき想いを含んだ笑みを浮かべ、「(見ていなさいよ。曹操と董卓……。あのひと。李儒(理樹)は、私(わたくし)が彼を骨抜きにして傀儡し。この国を自分の物にしてやるのだから……)」と。己の脳裏で思う。袁家の姫さまこと、袁術なのであった。




 ◇◇◇◇◇



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