第149話 李儒(理樹)と内気な姫殿下【三】(7)

 またそれを聞けば、自然と夏候惇の口から。


「フム、そうか……」と、声が漏れてくるから。


「うん」と曹操孟徳自身も自然と言葉が漏れる。


 だから二人……。いや、この後門にいる四人は、皆揃って自然と無言、沈黙を続けるのだ。


「……ん? あれ? ちょっと待てよ?」


 でも、直ぐに沈黙が崩れたのだ。


 だって今の今まで従姉、元魏の覇王曹操孟徳と口論、言い争いをしていた夏候惇の口が開き、台詞が漏れてきた。


 まあ、そうなれば、曹操孟徳自身の口も開いて。


「ん? どうした。惇?」と、俯いていた己の顔を上げて、夏候惇へと言葉をかける。問うのだ。


「いや、孟徳、俺、ふと思い出したのだけれど」


「うん、何を思い出したの。惇?」


「俺さ、良く考えたら。孟徳の家臣。臣下の一人である事には間違い無い。無いのだけれど……」と。


 自身の問いかけに対して、彼女の従妹、臣下の一人である夏候惇は、こんな当たり前の台詞を曹操孟徳へと返してくるから。彼女は少しばかり困惑するのだ。だから悩んだ顔で、こんな台詞を漏らし始める。と、いうか?


 自身の従妹さまへと再度問いかけ始める。


「うん、惇。そう。そうだけれど。それがどうしたの、惇?」とね。


 でっ、従姉であり。己の主君でもある曹操孟徳に訊ねられた。問われた。夏候惇はと言うと。


「俺も孟徳と一緒で漢。董卓から一軍の将として任命され兵を預かっている立場なのだが……。お前が李儒(理樹)。あのガキの警護の為に職務を蔑ろ。投げ、放置をして、あいつの後を追い。城外へと出るのが不味いのなら。俺だって、この洛陽の城郭外へと出て職務放置をするのは不味い。不味い事になるのではないか? 孟徳? 違うのか?」と、曹操孟徳へと問いかけ始めたのだ。夏候惇……。



 曹操孟徳の従妹さまは、少々悩んだ顔で訊ね始める。と、いうか? 策士である自身の従姉さま。曹操孟徳へと猜疑心、疑惑のある『ジト目』で見詰める。見詰められるから。曹操孟徳自身は、『ギク!』、『ドキ!』となり動揺。動揺を始めだす。

「アッ、ハハハ」と、己の頭に片手を当て……。



 そう、笑って誤魔化し始める。「ばれたか」の言葉も夏候惇へと付け加えながら笑って誤魔化し始めるのだ。曹操孟徳は夏候惇へと。実は先程から己の臣下であるにも関わらず。彼女の言うこと、命令、下知を了承しない頑固一徹な従妹さまへと曹操孟徳は、策を弄して演技。気落ち落胆。己の目、瞳に涙を浮かべてみせて夏候惇から同情心をかって李儒(理樹)。己の大事な主を一番安全な方法で守護。武に優れた上に。荒々しい出来事が急に起きても、己の意思と思考で、臨機応変に一人で対処でき、時間稼ぎが出来る名将である夏侯惇にどうしても李儒(理樹)の警護をさせたからと演技した。して見せたのだが。


 今の夏侯惇の曹操孟徳を見詰める目と瞳は、『ジト目』、猜疑心と疑惑のある目と瞳だから。従妹さまには、曹操孟徳のくだらない策謀と演技だとばれている。露見をしているようだ。


 またそのこと自体も賢い曹操孟徳はわかっているから夏候惇へと笑って誤魔化し始めるのだが。


 彼女、曹操孟徳がわかっているのはそれだけではない。


 そう、生前、古の時代でもそうであったのだが。魏の覇王曹操孟徳の覇道に従軍して数々の武勲を立てた智、武に優れた名将である夏候惇は、魏の覇王曹操孟徳からの官位だけではなくて、漢の皇帝陛下からも官位を授かっている将なのだ。


 だから魏の覇王曹操孟徳の家臣でもあり。漢帝国の臣下、家臣の身の上でもあるから。漢帝国の中では、曹操孟徳とは同じ臣下の身分、立場になる複雑な関係でね。この世界でもやはり同じ、と、いうか?


 魔王董卓仲頴若しくは、李儒(理樹)の策。離反の策の為だろうか? 曹操孟徳に一軍の将として任命、許可をした。おろしたと同時に、彼女の副将の一人である夏候家の流れをくむ夏侯惇へも曹操孟徳と同じ権限を与えた。



【読んで頂きありがとうございますm(_ _"m) レヴュー・星・感想・ハート等の応援も筆者の投稿の励みにもなりますので。もしも宜しければ。大変にお手数ですが宜しくお願いしますm(_ _"m)】



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る