第13話惑乱と混沌

 困っている。今日はあんまり執筆ができなかったから、このまま休んでしまうわけにはいかないのだ。

 どう動けば?

 女神。

 :やっと私を呼んだのね。

 今日は、あまりにも安穏として暮らしてしまったので、後悔が残ります。

 :いちいちうるさいわね。

 くよくよしすぎなのでしょうか?

 :いちいちうるさいわね。

 これから書けばいいのでしょうか?

 :執筆にのろいかけて……そしたら私たちがどうにかして執筆ののろいをとくとでも?

 何も考えず行動できたら楽なんです。明日のコンディションのことも考えねばならないし、食事も人間関係もすませてきたばかりなので。考え事をするのにちょうどいい時間帯なのです。

 :人間関係をすませるって言うの?

 普段接点のない家族なので。

 :さりげに……まあ、いいでしょう。明日のためにアルギニンVを飲んで。

 ――! 飲みました!

 :じゃあ、寝る。ほんとに。

 明日は何時に起きますか?

 :起きちゃった時間に。

 執筆はシャワーの後ですか?

 :ほんとに、自分で決められないの?

 はい、なに一つ。

 :呆れちゃった!

 作家として独り立ちするのに必要な知識と、行動を教えてください!

 :お願い。

 :そう言ってほしいな。最初から。

 お願いします!

 :そういうわけ。なあんだ。

 今まで専門学校での先輩の行動をトレースしたり、作品を集めたり、書き写したりしましたが、どうしてそうするのかがわからなかった。なににもとづきその行動を決定するのか。そんなことは知らなくていい。わたくしはわたくしの行動を決定せねばならない。

 :あー……。そのまんまでいーのに。

 :あまったれて、頼ってほしい。

 はい?

 :どうしてドラえもーんて言わないの。ジャイアンがーって。

 そういうキャラを演じればいいんですね?

 :納得。キャラを理解すればいいのよ。どうして? おまえの個性は?

 わたくしの? いえ、わたくしに個性はございません。惑乱と混沌の使徒です。

 :中二病か……。

 いけませんか? 今日もコードギアス観ていて、ユーフェミアさま、さすがに前半から出てきたキャラだけあって、巻き返し意外性があってよかったです。スザクも救われて、黒の騎士団の存在意義がなくなる。それは、ルルーシュに武力を捨ててほしかった、その一念ではないかと。人々に夢は必要、そういうテーマがあって、それを打ち崩すために行動するルルーシュという人間、それが反逆のルルーシュなんですね。あと一枚でエピソードが終わってしまうなんて、悲しくて見られません! きっとユフィは死ぬと思います。

 :……おもしろいわね。

 あ、すみません。。夢中になってしまいました。

 :わかった。おまえ、オタク志望だろう?

 あこがれはしますが、オタクだなんて、おこがましいと思ってます。アニメ、あまり見てないんです。

 :ぜひ見て。そんで今みたいにいろいろ教えて。

 あら、女神もアニメ文化にご興味が?

 :ある。

 なら、頑張って観なくちゃ! マンガでもいいですか?

 :いいよ。三月のライオン、棋士の話ね。たぶん羽生棋士もその流れにのっかってるはずよ。将棋が流行るのって、書店に行ったときわかるでしょ。

 あー、将棋も書店で特集組んでましたね。たしか日本刀を特集していたなあと思った後、刀剣乱舞がおせおせになったんですよ。

 :それだ! 書店に行って、確かめろ!

 はい! 絵本はいかがいたしますか?

 :絵本……ねえ。そっちはあまり。文化としては重宝するけれど。むずかしいことを大げさに騒ぐと、ボロがでるわよ。

 むずかしいことってなんですか?

 :しゃべらない。

 え、伝統とか、お国柄とかですか?

 :そう。

 外国の作品は文化背景を知ることで、よりよく味わえるってことですね!

 :そう。

 妹も昔から読み継がれた作品を読みたいって言ってました。裏事情みたいなことを調べて提供したら、喜ばれるかも。

 :そうして、うん。

 こわい絵、なんて資料としてはどうでしょう?

 :うん、いいんじゃない?

 妹に貸してみようかな。

 :それがいい。

 でも、自分で読んでからにしようかな。

 :それがいい。

 シンデレラ(中野京子)は?

 :別に。美人が得する話でしょ?

 やめておきましょうか。

 :うん。即物的すぎる。ペローのあれは、シビアな現実を味付けでまろやかにしてるだけ。内容はパトロンが肝心っていう話だから。

 おす。では、今から読書タイム!! 本は『こわい絵』で。

 :ちょっと待ってよ。小説はどうするの。

 つき合いも大事かと。

 :うーん。小説家にむいてない。

 じゃあ、苦しい思いをして小説仕上げて、そうしたら息抜きに『こわい絵』を読みますか?

 :うん。ライバルはいくらでもいるし。そしたら、毎日ちょっとずつ書いて、ちょっとずつ読む、これくらいじゃないと。

 :でも、書く方優先ね。

 はい。

 では今日はもう寝ます。

 :はいはい。

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