13.1話:二日酔い(アリシア視点)
【アリシア……私たちの可愛い娘……】
またこの夢、もう10年も昔のはずなのにいつまでたっても忘れることができない夢。
【お前が心から信じる人についていきなさい……その人こそ※※なのだから……】
そしていつも最後の言葉にノイズ混じりの音が被さり、かき消される。
お父さん、あなたは最後になんて私に言ったの――?
「……あれ、ここどこ?私は――」
身体を起こすと見慣れない木造建築特有である木材のにおいが鼻に広がる。
高い位置にある窓から日の光が差し込むあたり昼間だということは分かるが……
「あちゃー……もしかして、酔い潰れたのかしら私――!……いたた」
頭がガンガンと鉄工所の金属同士がぶつかるように響く鈍痛が頭の中を駆け巡る。
久しぶりに自分の限界量を越えたアルコールを摂取したせいか、過去一度も経験をしたことのない痛みで目の前がチカチカする……
「苦手だけど、回復魔法をかけるしかないか……とりあえず、着替えて……着替えて?」
ふらふらしながらベットの横にかけられていた自分の服を取ろうとした時に気が付いた。
確かに記憶がなくなるまで飲んだ、まぁこれは仕方ないとして……問題はその後だ。
自分で着替えて寝たとは限らないことに気が付いた。
「……誰が、着替えさせたのかしら。アイツ?いや、さすがにそれは無いか……なら、ヨミ?」
一瞬でもミナトに着替えさせられている自分を想像してしまい、顔が火を噴くように熱くなった。きっと真っ赤になっているだろう。
だが、普通に考えてありえない。自分にそう言い聞かせて着替えを始めようとパジャマの上着を脱いだ……その時だ。
「ふわぁ~……ん、起きたかアリシア。今ヨミさんが朝飯を…………」
寝癖が付いたままのボサボサ頭のミナトが許可もなく、勝手にカーテンを開けて入ってきた。
私は突然の出来事に脳みそが完全にフリーズした、ミナトも完全に固まっている。
どれくらいの時間が過ぎたのだろうか、いやホントは一瞬だったのかもしれない。
ミナトが視線を逸らさずに言った一言で、我に返ると片手で胸元を隠しながら、私は詠唱を始めていた。
「あ~……その、なんだ。すまん」
「……『漆黒の帳、降りし時、全ての世界は闇包まれ……』」
「やめろ!見たのは謝るし、殴られる覚悟も出来ている!だからそのやばそうな詠唱は止めてくれ!」
「最後に言い残すことは?」
「……どことは言わないが、ご立派ァ!」
私は、詠唱魔法を空いている片手に纏わせると、黒い炎の拳が出来上がる。それをやりきった顔をしたミナトの腹部に叩きこんだ。
部屋の中をゴムまりのように飛び回ったのち、落ちてきたミナトはピクピクと痙攣をして口から魂が出ているように見えた。
爆音がギルド内を揺らしたようで、後からやってきたヨミに怒られたのは言うまでもない。
続く
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