第11話 幽霊ちゃんの恋物語
結局、俺とブラッドは正座の状態で『セイレーン』の出来事を白状させられた。
女性達からは侮蔑の篭った冷たい視線、男性達からは羨望の眼差しで見られた。
特にブラッドは鼻血の後もくっきり残っていて、それを女性陣は見下した目で見ていた。
でもさ、料理がただで手に入ったし人助けもしたんだから、褒めても良いんじゃね? ヒーローとは世知辛い職業なのだと知った。ワンパーーンチ。
それに、ここの酒代だって誰も言わないけど、俺が手に入れた金で支払ってるんだぜ。しかも、俺は未成年だから酒が飲めないのに……。
俺だってケチじゃないから一言ぐらい礼を言えば喜んで金ぐらい出すよ。
それなのに、さも当然とばかりに、俺とブラッドをパシリにして戻ってきたらすでに乾杯しているとか酷くね? しかも、チョット良い思いをしたら訳も分からず正座とかあり得ないだろ。
年功序列と女尊男卑が合わさると、俺とブラッドが底辺に位置すると把握した。マジ最悪。
機会があったら、コイツ等には何か
宴会の話は省略する。理由は単純、大人が酷かったから。それでも、簡単に纏めると……。
・ヨシュアさんは酔っぱらうと脱ぐ
・シリウスさんは泣き上戸
・シャムロックさんはキス魔
・ローラさんはうわばみ
・ベイブさん飲んで暴れて睡眠薬で寝る
・ブラッド、何時の間にか席を外してログアウト
……箇条書きでも酷い。
ヨシュアさんは普段プレートメイルを着ているから、その反動で脱ぎたくなるらしい。必死で止めるステラを振り払い笑いながらストリップショーを始めた。それを見たブラッドが、鼻から血を垂れ流していた。
シリウスさんは酒が入ると、泣いて何かぐちぐちと独り言を呟いていた。彼の事は全員で放置した。
シャムロックさんは酔っぱらうと誰構わずにキスしようとした。姉さんがターゲットになりかけて、義兄さんが守ったら替わりにディープキスをされていた。歯並びの奇麗なゴリラにディープキスされるとか、俺なら死ぬね。
そして、酒と言ったらベイブさんだが、俺が事前にベイブさんの近くにあった酒に睡眠薬を入れといたら、案の定、それを飲んで暴れ始めるのと同時に倒れて床で眠った。当然、翌朝はマッドの刑が決まっている。それまでの間、良い夢を見ろよ。
アビゲイルは何故かローラさんと気が合って一緒に飲んでいたけど、この二人はウワバミなのか二人で店にあった酒の大半を飲んでいた。どうやらマスター秘蔵の一本も見つけ出して飲み干したらしい。空き瓶のラベルを見たマスターが陰で泣いていた。
こんな酷い大人を子供が見たら悪影響は確実、それにアホがうつる。
フランとリックは、早々に地下に行かせて寝むらせた。こんな大人達にはなるなよ。
ああ、最後にブラッドだが、誰にも言わずにログアウトしているのを俺だけが気付いた。恐らくだが、『セイレーン』でスッキリして出したカル○スが付いちゃったパンツの処理をしに一旦ログアウトしたと思われる。
同年代の男として彼の行動を理解したから、皆には内緒にしてやった。
……翌朝。
「これは酷い……」
滅茶苦茶に荒れた店の後片づけをしながら、マスターがぼやいていた。
「アサシンが来てから、毎日片づけをする羽目になるとは思わなかった」
何故か俺のせいにされているけど、一昨日は海賊が、昨日は大人達が暴れたんだから間違っている。
良い匂いがするからカウンターを見ると、ジョーディーさんがオムレツらしき物質を作っていた。もちろん毒。
卵がほんのり焼ける匂いは良いから、料理のスキルもレベルアップしているみたいだ。だけど毒。
確実にこのチビは間違った方向に進んでいる。
「先生、良い匂いですね」
匂いに誘われたアルサがジョーディーさんに話し掛ける。その様子は食虫植物に近寄る蠅。
「これ旦那用だけどアルサも食べる?」
「良いんですか? 戴きます!」
……まあ、一度経験すれば良いと思うよ。
さて、ゲーム時間で明日の朝には船に乗って島へ向かうから、今のうちにやるべき事をやっておこう。
やる事は二つ。師匠への手紙とポーションの補充。
ポーションはあまり使ってないが、キコの実グミの毒霧が残り1つなので補充したい。
あれは便利だし盗賊攻撃スキルの『目つぶし』という汚ねえ技の唾吐きを、格好良くごまかせるから貴重している。
手紙と薬作成のどっちを先にやるか考えたけど、姉さんがチョイ悪おやじに手紙を送るのが明日の朝と聞いていたので、今晩手紙を書けば良いかと先に薬を作りに出かけることにした。
「それじゃ、薬を作りに出かけるね」
床で痙攣しているアルサとベイブさんを蹴とばして店を出ると、チンチラが後から付いてきた。
「何?」
「カートさんが一人で行かすな、だって」
どうやら昨日の件でさらに信用をなくしたらしい。
「ボディーガードさんよろしく」
「あは。頼まれました」
改めてチンチラを連れて、コトカの市場へと出かけた。
薬の錬金瓶は一昨日に雑貨屋で買った在庫があるからパス。あそこは店員がウザいから出来るだけ避けたい。
雑貨屋の反対側に建っている素材屋の前で立ち止まる。うーん、外見は普通なんだよな。
店の玄関には可愛らしい花の咲いた植木鉢も置かれて、手入れもされている。
「入らないの?」
「……いや、入るよ」
俺が立ち止まったのをチンチラが首を傾げて不思議に思い、声を掛けて来た。
俺の気持ちとしてはチョットした心霊スポットに入る気分で、少し勇気がいる。まあ、立ち止まっていても仕方がない。覚悟を決めて店内に入った。
薄暗く人気のない店に入ると、ぞくり! と寒気が俺とチンチラを襲った。
「なんでこんなに寒いの?」
チンチラが寒気を振り払うかの様に両腕を擦る。
「……商品の品質を保つためです」
「ふぁっ!」
「キャッ!」
後ろから小さな声がしてチンチラと一緒に振り返ると、前回も対応した幽霊ちゃんこと、雑貨屋の少女が立っていた。
相変わらず前髪が伸びて顔の表情が見えないし、服もゴスロリっぽい黒だから、なおさら怖い。
「……いらっしゃいませ」
口元がにっこりと笑っているので一応接客しているらしい。顔が見えないから逆に怖く感じる。
「材料の購入と奥の調合部屋を借りたいけど、空いてる?」
「……調合部屋は1時間2sです。素材は何をお求めでしょう」
「薬草、麻痺毒、魔力草、キコの実それに……が欲しい。あと、出来ればだけど薬草は乾燥しているのが欲しいけど、あるかな?」
「……乾燥している品は扱っていません」
参ったな。それだと時間が足りない……今日は乾燥させるだけにして、残りは船上で作業か? 煮詰めるのは島についてから……。
「……あの……乾燥機なら売っています」
俺が悩んでいたら幽霊ちゃんがボソリと呟いた。怖いから普通に声を出せ。
「乾燥機?」
「……はい、材料を乾燥させる道具で……一台3gです」
ほう、そんな便利な道具があるのか。
「見せてもらえるかな?」
「……少々お待ちください」
幽霊ちゃんが奥から小さい箱を持って来てカウンターに置く。
「……こちらです。中に素材を入れてここのスイッチを押せば一時間ぐらいで乾燥します。魔石の蓄電式なので、充電が切れたら魔石を交換してください」
そんなに大きくもない。いい感じだ。
「うん、買うよ」
「……ありがとうございます」
幽霊ちゃんの口元に笑みが見える。どうやら売れたのが嬉しいみたいだ。
俺には生きている人間に取りつく事に成功した悪霊の笑顔に見えていた。
「……あの」
ん? 何かな? 幽霊ちゃんがもじもじしている。
「……粉砕機もありますが……いかがですか?」
意外と商売上手らしい。
粉砕機か……すり鉢で素材を砕くのは骨だし、ついでに購入もアリかな。
それに、金ならいくらでもある。
「見せて」
「……はい」
おや? 幽霊ちゃんが何となく嬉しそうに奥へ粉砕機を取りに行ったぞ。
「意外と可愛い人だよね」
後ろに控えていたチンチラが幽霊ちゃんを見て、最初のイメージを覆したらしい。チャララ、チャ、チャラー。悪霊から地縛霊にレベルアップ。
「……こちらになります」
粉砕機は先ほどの乾燥機より小さい箱だけど、手回しのハンドルが備え付いていて、上から素材を入れハンドルを回すと粉砕する仕組みだった。
「うん、大きさも良い感じだし買うよ。幾らかな?」
「…………80sです」
「じゃあまとめて清算よろしく」
「……はい…………4gと54s27cになります」
日本円にして四万六千円ぐらい。道具を二つ購入したにしては安いかな? 最近、金銭感覚がおかしくなった気がする。
そもそも、領主の館から奪った金額が52
「それじゃ奥の部屋を使うね」
「……ごゆっくり」
幽霊ちゃんに見送られて、俺とチンチラは奥の部屋へと入った。
奥の調合室は奇麗に清掃されていた。
師匠もそうだったけど調合師は奇麗好きが多いらしい。二人しか調合師を知らないけど。
乾燥機に薬草を入れてから蓋をしてスイッチを入れる。
箱の中からブーンと音がしたから動いていると思う。説明書も保証書もないから分からん。
乾燥機が動いている間にキコの実グミを作る事にした。
「チンチラは危ないから離れていて」
「うん」
また目に入ったら危険だからキコの実を優しく粉砕する。
次に凝固剤替わりのダルモンの根を入れて、酸味を抑える為にジンガーの種をすり潰して入れる。
後は、ゆっくりと混ぜてから手で丸くこねる…………でき上がり。
予定数のグミが出来た処で乾燥器から音がしなくなった。蓋を開けて見てみれば薬草が乾燥していた。
乾燥した薬草を取り出して粉砕機に入れてハンドルを回す。薬草は粉砕されて粉となり箱の底に溜まっていった。次に麻痺草も同じように粉砕する。
手作業と比べて機械を使うと作成速度が早くなった。特に乾燥が一時間で終わるのはログイン時間が限られているプレイヤーからしたら嬉しい限りだ。
後は薬草と麻痺草の根を混ぜて、煮詰めればポーションの出来上がり……。
「…………お茶のサービスです」
うおっ!!
何時の間にか幽霊ちゃんがお茶を持って背後に立っていた。ゴ○ゴだったら間違いなく射殺して依頼を受けずに帰る。
「あ、ありがとう」
お茶を受け取りズズッと飲む。師匠の茶とは違うけど、同じようにハーブがスーッとして美味しかった。
「美味しいですね」
チンチラも茶を飲んで幽霊ちゃんを褒めると、彼女が嬉しそうにお辞儀をしてから部屋から出て行った。
あれで雰囲気がもう少し明るかったら、ヤンデレタイプの読者サービスができるのに残念だ。
「どうしたの?」
「何でもない」
幽霊ちゃんが消えた扉を見ていたら、読者サービス一号が話し掛けて来たから、何でもないと首を横に振る。
アイドル業界はライバルに敏感らしい。顔で金を稼ぐ世界も大変だと思う。
茶を飲んだ後、再びポーションの作成に取り掛かった。
午前中でポーション作成が終了して、午後はマジックポーションの作成をする予定。だけど、その前に腹が減った。
「そろそろ昼にしようか」
「え? もうこんな時間? 早いね」
飯を食おうとチンチラを誘う。彼女は暇つぶしにと参考書片手に問題集を解いていた。
チンチラが俺に頷くと、外部リンクの接続を切って席を立つ。
調合室を出て店舗へ行くと、幽霊ちゃんが窓際に立って外を眺めていた。
先に幽霊ちゃんを見つけたのは初めて。ミステリーハンターに一歩近づく。
幽霊ちゃんは窓から外を見てどこか上の空だった。窓際の幽霊。どう考えてもこの店は心霊スポットだと思う。
ずっと脅かされていたお返しに、幽霊ちゃんの背後へ忍び込んで驚かそう。唇に人差し指を添えてチンチラを静かにさせると、幽霊ちゃんの背後にそっと回る。
「ちょっと休憩に行ってくるね」
「ひゃあ!」
背中越しに話し掛けたら幽霊ちゃんが驚いて、絶叫、いや、奇声、いやいや、声を聞いたら呪われそうな悲鳴を上げた。
その様子にチンチラがくすくすと笑っていた。彼女もあれで結構冗談が好きな方だ。
「……びっくりしました」
「いつも驚かされているからね」
「……そうなんですか?」
え? ……自覚なかったの?
「店員さんも一緒にお昼食べに行きますか?」
チンチラが幽霊ちゃんに尋ねると、幽霊ちゃんは驚いた様子でもじもじしていた。
「……良いんですか?」
「もちろんです。レイ君も構わないよね」
「いいよ」
俺が頷くと幽霊ちゃんが笑顔を見せた。呪う相手が見つかったみたいなその笑顔が怖い。
ふと、先ほどまで幽霊ちゃんが見ていた窓の外を見れば、正面の雑貨屋で暑苦しい兄ちゃんが声を荒げて呼び込みをしていた。雑貨屋って呼び込みするような店なのか?
俺達が外に出ると、後から幽霊ちゃんも店のドアに鍵をかけて「Close」の立札を置く。
「らっしゃーー! そこの兄ちゃん、タワシ、タワシいらねえか? 今なら安いよ!」
タワシなんていらねえよ。
「相変わらずあの兄ちゃんは威勢が良いな」
「……そうですね……羨ましいです」
雑貨屋の兄ちゃんに呆れていると幽霊ちゃんがボソッと呟いた。ん? あれ? なんか幽霊ちゃんの様子がおかしい。
「…………こっちです」
幽霊ちゃんがトボトボと落ち込みながら歩き始める。
俺とチンチラは顔を合わせて首を傾げたが、幽霊ちゃんが落ち込んでいる意味が分からないまま、その後を付いて行った。
幽霊ちゃんが薦めた店は女性受けする可愛らしいカフェレストランだった。
ランチの種類も大半が女性限定ランチと、明らかにターゲット層は女性。男は股間の一物取ってから入店しやがれ的な空気を醸し出していて入り辛い。
だけど、居心地が悪い俺を余所にチンチラは店を気に入っていた。
「良いお店ですね、気に入っちゃいました」
俺は気に入らねえ。もっと普通の店がいい。
「……家族以外の人とお食事するのって、生まれて初めて」
幽霊ちゃんは俺と年齢は同じぐらいだよな……今までぼっちだったんですか?
料理が来るまでの間、お互いに自己紹介する。
幽霊ちゃんの名前はフローラム。年齢は俺の一つ下で16歳だった。
俺の予想通り、幽霊ちゃんは内気な性格で友達が居ないらしい。
あの店も接客すると何故かお客が逃げて売上が少ないらしい。経営は大丈夫なのか? そして、その原因が自分だと自覚しろ。
「……おばあちゃんの薬を買いに来るお客さんが居るから平気」
あの店では幽霊ちゃんの祖母が作る腰痛用の湿布薬を販売していて、なじみの老人達が買いに来るから赤字にはなっていないとか。
客の年齢層が老人だけなのも、同世代の友達ができない原因だと思う……。
「でも目の前の雑貨屋さんの人も同じぐらいの年齢だし、お店も正面同士だから、話しをしたら友達になれるんじゃないかしら」
チンチラが幽霊ちゃんにそう提案するけど、俺はあの暑苦しい兄ちゃんと友達になるとかゴメンだね。
「……ブロック君は同級生。だけど私の事を知らない」
「さすがにそれはないでしょ」
俺が呆れると、幽霊ちゃんが頭を左右に振って残念そうな表情を浮かべた。
「……クラスも9年間一緒。だけど、私の名前……存在も知らない」
幽霊ちゃんの話を聞いて、頭の中で盗賊隠蔽スキルが思い浮かんだ。
「それってさ、もしかして自動的にステルスが掛かってないか?」
「……ステルス?」
「これ」
そう言って、盗賊隠密スキルを発動させる。
幽霊ちゃんは俺が急に薄くなったのを見て驚いている様子だった。
「……それ、私もできる」
「やっぱりね」
声を出してステルスを解除する。
「だとしたら、フローラムちゃんがいきなり現れたのって?」
「そう。接客で声を出したからステルスが解除されたと考えれば納得がいく。
俺のステルスもレベルが15になるまでは喋ると解除されたし、今も小声じゃないと解除されるからな。
だけど、彼女のはかなりレベルが高いよ。俺の生存術でも生命感知すら反応しないし、恐らくレベル20は確実に超えているね」
「うーん。だったら、さっき私達が先に見つけたのはどうしてだろう?」
そう言えばチンチラの言う通りだな……あの時、窓際で幽霊ちゃんを見つけたのは偶然?
「……多分、ブロック君のおかげかも」
原因を考えていると、幽霊ちゃんがポツリと呟いた。
「ブロック君というと雑貨屋の店員?」
窓から見えていたし心当たりは一人しか居ない。そして、正解だったのか、幽霊ちゃんがコクンと頷いた。
「そう……昔からブロック君を見ていると、他の人も私の事を見つけてくれた……ブロック君には見えないけど……」
そこでランチが運ばれてきたけど、何故か二人分しか来なかった。
「店員さん。もう一人の分は?」
「え? ……あれ? 申し訳ございません。今すぐ持ってきます!!」
店員が急いで厨房へ戻って、幽霊ちゃんが頼んだ女性限定ランチを持ってきた。
「ひょっとして、今のも?」
チンチラの質問に幽霊ちゃんがコクンと頷く。
「……おばあちゃんが一緒じゃないと、皆見てくれない」
そう呟く幽霊ちゃんは諦めたかの様に寂し気だった。
ランチを食べながら幽霊ちゃんについて考える。
幽霊ちゃんの原因は分からないけど、常時ステルスが起動する病気で間違いないだろう。
だったら何で雑貨屋の店員が一緒だとステルスが起動しないのか……どう考えてもあの暑苦しい兄ちゃんが打ち消している。それ以外思い当たる他ない。
なら幽霊ちゃんのステルス障害の解決案として、雑貨屋の店員に協力してもらう必要があるが、その前に、あの暑苦しい兄ちゃんに幽霊ちゃんを認識させる必要があるな……。
考えがまとまった処で、別の問題がある。
この店の女性限定ランチは俺が食べている普通のランチと中身が同じなのに、女性限定ランチだけデザートが付いていて、1s安いんだけど酷くね?
俺達が食べ終ると店員が皿を片付けて替わりに食後の紅茶が置かれた……女性にだけ……げせぬ。
仕方がないから俺だけ別にコーヒーを頼んだ。もちろん別料金。もう二度とここには来ねえよ、食べ○グの評価はもちろん1だ!
「……ってわけでさ、雑貨屋のブロックだっけ? 彼に協力してもらえば、フローラムのステルス障害が解決できると思うんだ」
先ほどまとめた考えを二人に説明する。
チンチラも食事中に俺と同じ考えだったのか、話を聞いて頷いていたけど幽霊ちゃんは指を絡ませてもじもじしていた。
「どうしたの?」
「……ブロック君に迷惑」
幽霊ちゃんの言い方に、チンチラが何かを察知したらしい。
「もしかして、フローラムちゃんって、ブロック君の事が好き?」
「…………」
チンチラの質問に幽霊ちゃんが頷いて顔を隠した。前髪が長いから本当に顔が隠れて恐怖が増す。
「だったらなおさらです。フローラムちゃんがブロック君を好きなら、彼に協力してもらいましょう!」
突然、チンチラが立ち上がって声を張り上げた。
急にどうした? 拳を握りしめて幽霊ちゃんを煽っているけど、何でそんなにやる気を出してるの?
「レイ君はブロック君に彼女が居るか確認してきてください」
「……はあ」
突然、チンチラから指示を言われて何となく頷く。
「私達はフローラムちゃんの格好を変えてきます」
「……え?」
幽霊ちゃんが驚いた様子でチンチラを見上げる。
「姿が消えちゃう病気もそうですが、フローラムちゃんにも問題があります。なんで前髪をそんな長くしているんですか? 髪を切って服も明るめにしましょう。イメチェンしてブロック君にアピールするんです!」
チンチラの勢いに俺と幽霊ちゃんが尻込みするが、彼女は鼻息荒く胸を張っていた……本当に姉さんに似てきやがった。
「……無理」
「無理じゃなく、やるんです。自分を変えましょう! 少しの勇気で世界が変わるんです」
一体、何の自己啓発セミナーだよ。
「……分かった。がんばる」
幽霊ちゃんがやる気を出したけど、ひょっとして流されやすい人なのか? まあ、いいか……。
会計を済ませた後、俺は二人と別れてあの暑苦しい雑貨屋へと向かった。
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