人と竜と鬼と6
「それで、栗山はどこ行ったんだ?」
自分用のマグカップを弄びながら斉彬が結希奈に聞いた。
「まだ剣術部の部室にいますよ。話をつけてくるって、聞かなくて」
「おいおい、大丈夫なのかよ? 一戦やらかした後じゃないか」
斉彬の懸念に結希奈は肩をすくめてため息をついた。
「あたしもそう言ったんだけどね……。ま、でも大丈夫だと思いますよ。秋山さんでしたっけ? 剣術部の部長さん、あの後謝りに来てくれて、それで秋山さんと話し合うって言ってたから」
「まあ、今のところは徹の帰りを待つしかないか」
慎一郎の話に結希奈も賛同する。
「そうね。どのみち今日はもう無理だろうし」
結希奈に釣られて部室の皆が窓の方を見る。そこからは赤い夕焼けの光が差し込んできていた。気がつけばもう夕方だ。
『なんと! もうこんな時間ではないか! どうりで腹が空くはずじゃ!』
メリュジーヌのはらぺこがまた始まったと思いたいが、今日は兼の練習に集中していてまだ昼食を食べていないことに今更ながら気がついた。
「じゃあ、今日はここで解散ということで、ほこらの再建に関してはまた明日ということでいいかな?」
慎一郎の提案に皆が同意した。
「それじゃ、おれは何か食べに行ってくるよ」
『でかした! さすがはシンイチロウじゃ! わしはトンカツが食いたい! 肉じゃ、肉!』
「慎一郎、あたしも一緒に行っていい? あたしもお昼まだだったんだよね」
「こよりさん、このあとどうですか? 一緒にお茶でも……」
「うーん、どうしようかなぁ……」
結局、この日はそれで解散となった。
徹はその日の夜遅くに帰ってきたが、剣術部の意思は変わらなかった。
その後、〈竜王部〉は“
そのことについて、ほこらのひとつくらいならばそれほど大きな問題は生じないだろうという巽の見解を得た。“戌”以外の“
それを受けて〈竜王部〉はまだ未発見の“
この決定がのちに大きな意味を持つようになるが、そのことに彼らが気づくのはずっと後のことである。
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