Epilogue:望み叶えし者

 マイケル・ジョフレイ州議員は先の見えない悪夢の只中にいた。


 最初は藁にも縋る思いだった。ヴァンサント議員に押される一方であった苦境を脱する事が出来るなら、何でも構わなかった。いや、何でも構わないというのは語弊がある。正確には……自分の手に負える・・・・・相手であれば何でも構わなかった、が正しい。 


 甘かった。この世には人知を超えた存在というモノが本当にいるのだと、彼は身を以って知ったのだった。


 ヴァンサント議員が秘書や運転手共々、密室の車内で不可解な変死を遂げたというニュースが流れ誰よりも驚愕したのは、他ならない『依頼主』のマイケル自身であった。


 余りにも早すぎる。しかもその殺し方も尋常では無かった。半ばダメ元で頼んでみただけだったマイケルは、急に自分は取り返しの付かない事をしてしまったのではないかと恐ろしくなってきた。


 そして知人の伝手を頼ってLAを本拠地とするマフィアに依頼して、多少強引にでもこの剣呑な連中を抹殺してしまおうと決めた。ヴァンサント議員と違って、自分達の領域にズカズカと踏み込んでくる輩に対してはマフィアも容赦しないだろう。


 またいざという時の為に個別に探偵を雇って、あの『マスター』とやらの身元や居場所を探らせた。



 どちらも結果・・はすぐに出た。



 ある日マイケルが自宅へ帰ると、見覚えのある男がソファに座っていた。それはマイケルにあの『マスター』という男を紹介した、パトリック・R・ミッチェルという若者であった。


 驚愕するマイケルにパトリックは、「『マスター』からのプレゼントです」と言って大きめのボストンバッグを差し出した。マイケルが恐る恐る中を覗くとそれは、彼が依頼したマフィアのボスと幹部達、そして雇っていた探偵の生首であった。


 マイケルが悲鳴を上げてバッグを取り落とすと、転がり出た生首がボロボロの砂と化して崩れ落ちてしまった。


 同時にパトリックの姿が変わった・・・・。一瞬で、まるでミイラの如きおぞましい風貌に変身したのだ。そしてそのミイラの姿のまま恐怖に硬直するマイケルの耳元に顔を寄せ、奇怪に変貌した声で囁いた。


『あなたにはマスターがこの国を支配する為の傀儡となって頂きます。私があなたの監視を命じられました。勿論異存はありませんね?』


「……ッ!」

 



 それからは生き地獄であった。何をするにも常にパトリックが彼を監視し、マイケルの精神的な自由は一切失われた。この得体の知れない怪物達に抵抗する事は勿論、逃げ出す事も不可能であった。


 最早連中の人形となって生きる道しか無いのか……そんな絶望に囚われていたある日、LA自然史博物館からPRの仕事の打診があった。


 何でも、本物・・の『アラジンの魔法のランプ』が入荷するので、それをPRして欲しいのだそうだ。アラジンの魔法のランプと言えば、『どんな願いでも叶えてくれる』という伝説があるのはマイケルでも知っていた。


 ミイラ男などという存在が実際にいたのだ。ならばランプの精霊が実在していたとして何の不思議がある?


 実際に博物館で目にしたランプは、得も言われぬ妖しさに満ちているようにマイケルには思われた。彼は再び藁にも縋る思いで必死に願いを込めてランプを擦ってみた。だが無情にもランプには何の反応も無かった。


 館長やトルコの役人に憐れむような眼差しを向けられ、パトリックからは嘲笑と侮蔑に満ちた視線を浴びせられた。


 羞恥と屈辱に震えるマイケルは、同時にこの先一生連中の傀儡として生き続けねばならないのかと、目の前が真っ暗になる程の絶望に襲われ、半ば虚脱状態となっていた。


 それでも何とかPRの仕事だけは予定通りに終わらせ、博物館を後にしようとした時だった。時刻は既に夕刻を回っていた。



 ――力が欲しいか?



「……っ!?」

 博物館の玄関ホールで見送りに来た館長達と挨拶を交わしていたマイケルは、不意に耳元で誰かの声が聞こえたような気がして慌てて振り返った。


 だがパトリックは少し離れた所に立っていたし、それに今の声は明らかにパトリックとは違っていた。


「議員? どうかしましたか?」


 館長のウィリアムが訝し気にマイケルを見る。


「あ、いや……」


 気を取り直して今度こそ帰ろうとした時、博物館の外……つまりは街の方からパトカーのサイレンなどが引っ切り無しに聞こえてきた。消防車も出動しているようだ。それに混じって微かな……人の悲鳴。


「何事だ?」


 ウィリアムやトルコ人のムスタファ達が玄関から外の様子を見に行く。マイケルもその後を追った。そこでは、街のあちこちから火の手が上がっている様子が確認できた。


「い、一体何が……」


「皆さん、ここは危険です。一旦中に戻って『嵐』が過ぎ去るのを待ちましょう。この博物館は安全です」


 そう言って皆を促したのはパトリックだ。街の騒ぎに一切驚いている様子が無かった。それでマイケルは悟った。この騒ぎは、あの『マスター』とやらが引き起こしたものだと。


 実際に危険そうだという事もあって、ウィリアム達もパトリックの誘導に従って館内に戻る。


「一体何が起きてるんだ?」

「とりあえずニュースを確認してみましょう」


 ムスタファの意見に館長室まで向かおうとする一行。途中に例の『魔法のランプ』の横を通り過ぎようとした時だった。



 ――力が欲しくば、ただそう望め



「う……!」

 今度は先程よりも大きな声ではっきりと聞こえた。明らかに空耳ではない。頭の中で声が反響した為に、思わずその場で頭を押さえてしゃがみ込むマイケル。


「議員!? どうしました!?」


 ウィリアムの呼び掛けにも答える余裕が無い。そうしている間にも謎の声はマイケルに繰り返し語りかけてくる。



 ――何も恐れる事は無い。望むだけで力が手に入るのだ


(ち、力が……?)

 

 ――そうだ。お前自身の力だ。その力を以ってお前はお前のしたいようにするがいい


(私の……したいように……)



 自分の心の声にまで反応してくる謎の声だったが、マイケルは既にその言葉の内容に気を取られて、それ以外の事はどうでも良くなっていた。


 逡巡は一瞬だった。どの道今のままでは生き地獄が待っているだけだ。それなら悪魔の囁きだろうが何だろうが乗ってやる。彼はいつしか心の中ではなく、口に出して願いを叫んでいた。



「――欲しい! 力が……! 何者にも縛られない強大な力が……!!」



 それはマイケルの魂の叫びであった。ウィリアム達は勿論パトリックさえもが、突然叫び出したマイケルの様子に唖然とした。



 ――しかと聞き届けた。ここに『契約』は成った!



 高らかに宣言する謎の声。それと同時にショーケース内に収められていた『魔法のランプ』が、物凄い勢いで振動し始めた。


「な、何だ!? ランプが……!?」


 ウィリアム達が慌てふためいたのも束の間、彼等が見ている前で『魔法のランプ』が、重力を無視して空中に浮かび上がった。


「な…………」


 パトリックまでもが信じられない物を見るようにショーケースを凝視した。と、ショーケースのガラスにヒビが入ったかと思うと、一瞬の後には粉々に砕け散った!


「うわぁ!」


 ウィリアムとムスタファは思わず顔を庇いながら目を背ける。だがマイケルは何かに取り憑かれたようにランプに見入っている。


「せ、先生……いや、ジョフレイ・・・・・! それに触るな!」


 パトリックが『秘書見習い』の仮面を放り捨てて警告する。だがマイケルは勿論それを無視して、空中に浮かんだままのランプへと手を伸ばす。


 彼が触れた瞬間ランプが熱を帯びたように変色し、見る見る内に錆や傷、汚れなどが修復されていき、まるで作り立てのような美しい佇まいとなった。


 そしてその長く伸びた口に当たる部分から煙を吐き出した。ウィリアム達が呆然と見守る中、吐き出された煙は徐々に一塊になり、とあるシルエットを形作る。


 それは頭と四肢を備えた人型・・のシルエットであった。シルエットは更に固まって明確な人物・・の姿へと変わった。


 毒々しい紫色の肌に禿頭……いや髭や眉毛も含めて体毛という物が一切なく、全身に傷なのか皺なのか解らない無数の線が刻まれた醜い姿の大男であった。しかしその瞳だけが金色に発光し、異彩を放っていた。


 その姿を見たムスタファの目が恐怖に見開かれる。



「ジ、悪霊ジン……まさか、本当に……」



 現れた紫色の大男――悪霊ジンは、呟くムスタファを無視してマイケルに視線を向ける。


『契約者よ。ではお前の望みを叶えよう』


 ジンがマイケルに向かって手を翳す。するとマイケルは突然自分の心臓が爆発するかのような、胸の内に荒れ狂う感覚を覚えた。


「ぐ……がぁ……!」


 胸を掻き毟って苦しむマイケル。


「貴様……何をした!? 今すぐ止めろ!」


 パトリックがジンに向かって右手を突き出す。するとその手にポッカリと穴が空き、そこから何発もの砂の弾丸が射出された。


 弾丸は確かにジンに着弾したものの、ジンの身体が奇妙に揺らめいたかと思うと、全ての弾丸がその身体を素通りしてホールの壁に弾痕を穿つだけに終わった。


「何……!?」


『……妙な存在がいるようだな。なるほど……契約者の渇望の元凶・・となったのはお前……いや、お前達・・・か』


「……!」

 攻撃が効かなかったばかりか、全てを見透かしたようなジンの態度に、パトリックが警戒の度合いを跳ね上げる。その目がスッと細められる。



「貴様……何者か知らんが、貴様は確実に『マスター』の障害となる。ここで排除させてもらうぞ!」



 そう言うと同時にパトリックの姿が変化・・した。目や皮膚がボロボロに乾燥し、鼻が削げ落ちて恐ろし気なミイラの姿となった。一瞬前までの美形の青年の面影は全く無くなっていた。


「ひ、ひぃぃっ!?」


 その姿を見たウィリアム達が腰を抜かす。だがジンは興味深そうに眉を上げただけであった。


『ほぅ……これは。知っているぞ。エジプトで発生した死霊の類いだな。何故海を隔てたこの地にいる?』


『……これからすぐに死ぬ貴様が知る必要のない事だ』


 パトリックが『陰の気』を高めて一歩を踏み出そうとするが、ジンは苦笑したように待ったを掛ける。


『そう慌てるな。お前の相手なら別にいるだろう?』

『……何?』


 ジンが指差した先には、床にうずくまって苦しむマイケルの姿が。



「う……ごぉ…………があぁぁァァァァッ!!!」



 マイケルが天を仰いで一際大きく叫んだかと思うと、その身体全体が発光・・した!


『ぬぅ……!?』


 ウィリアム達は勿論、パトリックも余りの眩しさに一瞬目を逸らす。光が収まり視線を戻した時、そこには……



『お、お前は……ジョフレイ、なのか……?』


 そこにスクッと立ち上がって佇んでいたのは、紛れもなくマイケル・ジョフレイ州議員であった。だが……違う・・。パトリックはそれを確信した。


 落ち窪んでやつれ果てていた面相は見る影もなくなり、替わりに精気、覇気横溢した自信に満ち溢れた男の顔がそこにはあった。顔や表情だけでなく肉体自体も壮健そのものとなっていた。


 精気に満ちた姿は若々しく、優に10歳以上は若返ったように感じられた。


「…………」


 マイケルはしばし自分の身体を改めていたが、やがてゆっくりとパトリックの方に顔を向けた。


『……!』


「ふむ……ミッチェル君。君はクビ・・だ。今までご苦労だったね」


 そう言ってニッコリと笑うマイケル。


『ジョフレイ、貴様……ふざけるなよ?』


「ふざけてなどいないさ。君のご主人様にもそう伝えておいてくれ。私にはもっと頼りになるパートナー・・・・・が出来たので、君達との関係は打ち切らせてもらうとね」


 マイケルはジンの方にチラッと視線を向ける。


『貴様……少し痛い目を見なければ解らんようだな……!』


 パトリックはその腕から鋭利な剣を生やし、凄まじいスピードでマイケルに襲い掛かる。常人には全く捉えきれない速さだ。事実ウィリアム達には消えたようにしか見えなかった。だが……


 驚くべき事にマイケルはその速度に反応して、防御するように片腕を上げた。パトリックは構わずにその腕ごと切断する勢いで剣を薙ぎ払う。しかしそこでありえない光景が展開した。


 マイケルの腕に触れた途端、パトリックの剣の方がまるで鉄の塊に脆いガラスの剣で斬り付けたかの如く砕け散ったのだ。


『何だと……!?』


 勿論彼は手加減などしていない。驚愕するパトリックにマイケルはやはり薄笑いを浮かべる。


「ああ、やはり伝言はいい。君を始末・・すれば勝手に伝わるだろう?」


『……ちぃっ!』


 危機感が膨れ上がったパトリックが急いで離脱しようとする。この突然湧いた脅威をメネス王に伝えなければならない。全速力で出口に突進するパトリックだったが……


「待ちたまえ。クビだと言っただろう? なら退職金・・・を受け取りたまえ」


『……っ!?』


 いつの間にか彼の眼前にマイケルの姿があった。ミイラ化している彼の全速力に一瞬で追いつき、追い抜いたというのか。


『どけぇぇっ!!』


 パトリックの胴体から何本もの肋骨が凶器となって飛び出し、マイケルを串刺しにせんと迫る。だがそれすらもマイケルの服を貫いたのみで、身体に当たった瞬間に脆いガラス細工のように粉々に砕け散った。


『……!!』

「さあ、これが私からの餞別だ」


 マイケルはパトリックの頭を鷲掴みにすると、そこに力を込めるような動作をした。


『おぉぉ……があぁぁぁ……!』


 すると突然パトリックが苦しみ悶える。同時に彼の全身が内側から燃え始めた。


『マ、マスタァァァァ……』


 凄まじい熱量は一瞬にして、彼の【コア】ごと干からびた身体全体を焼き尽くした! パトリックは文字通りの消し炭となってこの世から消滅した。




『契約者よ。どうだ、望み通りの強大な力を得た気分は?』


 パトリックを始末したのを見届けたジンが側に寄ってきて問う。


「ああ……とても素晴らしいよ。ありがとう。君に願いを掛けて本当に良かった」


 マイケルは至福の表情を浮かべて笑い掛ける。実際に素晴らしい気分だった。こんな爽快なのは生まれて初めての事だ。


『良い顔だ。その力を以って、自分が為したい事を為すがいい。お前が自らの望みを満たせば満たすだけ、それは私にとっても『糧』となる。その途上で私の力が必要なら喜んで協力しよう』


「共生関係という訳だね? 望む所だ。一方的に搾取されるだけの関係より余程健全・・だ」


 ジンの言葉にマイケルは得心したように頷いた。そして……呆けたように腰を抜かしているウィリアムとムスタファの方に顔を向けた。



 ここで両者は正反対の行動を取った。


 ムスタファはマイケル達に向かって這いつくばるような服従、臣従の姿勢を取る。反対にウィリアムは「警察、警察に……」と、恐怖の叫びを上げながら館長室へ向かおうとした。


マリード・・・・、早速頼めるかい?」

『ああ』


 短く答えて、ジン――マリードがウィリアムの前に回り込む。マイケルとマリードは精神で繋がっている状態で、口に出して説明しなくとも彼の意思はマリードに伝わっていた。


「ひぃっ!!」

 ジンの姿を見て再び腰を抜かすウィリアム。マリードは恐怖に震える彼の瞳をジッと覗き込む。


『そうか。お前は骨董品が好きなのだな?』


「……!?」


『ならば……望みを叶えてやろう・・・・・・・・・


「え……」


 ウィリアムが訝し気な声を上げたのも束の間、彼の身体が急激に縮み始めた・・・・・


「な、何だ!?  何だ、これぇぇぇ!? えええぇぇううぅぅああぁぁいぃぃぃぃい?」


 狂ったような奇怪な声を上げながらウィリアムの姿がどんどん縮んでいき……やがて1フィート程度の物体・・となってその場に転がった。



 それは、僅かにウィリアムの特徴を残した……古代の民芸品のような不出来な陶人形であった。



「……ッ!!」

 その悪夢の光景を目の当たりにしたムスタファの肩が恐怖に震える。


「さて、ミスター・ケマル。君もジンに望みを叶えてもらうかい? それとも……」


「――ど、どうかお慈悲を! あなた様の手足となって働きます! なのでどうか……!」


 床に這いつくばるようにして必死に頭を下げるムスタファ。マイケルは思案する様子になる。


「ふむ……どうしようか、マリード?」


『こやつはトルコ政府の役人だ。下手にこの国で失踪・・されると、お前にとっても面倒な事になるやも知れん。それよりは生かして協力させた方がいいだろうな』


「なるほど……確かに。じゃあ釘を刺した・・・・・上で、協力してもらおうかな」


 マイケルが頷くとマリードがムスタファの前まで来た。そして彼の頭の上に手を翳す。


「ひ……」


『案ずるな。保険のようなものだ。お前が契約者を裏切らぬ限り我が力が発動する事はない。だが逆に裏切れば、お前もその人形のように自らの望みを叶える・・・・・・事となるだろう』


「……!」


 マリードはムスタファに何らかの『呪い』を掛け終えると側を離れた。プレッシャーから解放されたムスタファが喘息のように荒い呼吸を繰り返していた。その姿を横目で眺めながらマイケルが苦笑する。


「……しかし君、見た目やランプに封印されていた割には現代の情勢に詳しいね。ちょっと意外だったよ」


『何も意外な事は無い。我は万物のことわりを知る者。かつてはオスマン帝国の歴代スルタン達の助言者でもあったのだ。お前が望むのであれば、政治的な助言を行う事もやぶさかではない』


「へぇ……オスマン帝国の……」


 そう言えばムスタファの説明でも歴代のスルタンが所有していたと言っていた。であれば本当の事なのだろう。思わぬブレーン・・・・を手に入れたマイケルは、違う意味でもマリードが役に立ちそうだと喜んだ。



『オスマン帝国、か……』


 マリードもまた遥かな過去に思いを馳せていた。彼の最後の所有者であったスルタン、メフメト2世……。マリードの助言に従って西進を続けたメフメト2世だったが、取るに足らぬ小国にその野望を阻まれる事になった。


 即ち……ワラキア公国・・・・・・、その公王たるヴラド3世・・・・・が超人的な力を得て、その強さを以ってマリードの予言を覆したのだ。流石のマリードも、ヴラドのあの力を予見する事が出来なかった。大きな被害を出し自らも危うく殺されかけたメフメト2世は、その後彼の助言に従わなくなった。


 もう少しで彼の望みは叶ったというのに、後一歩の所であの忌々しい吸血鬼によって阻まれたのだ。


(ワラキアは既に滅びて久しい。あの吸血鬼もその眷属・・も最早残ってはいまい。今度こそ我が望みを叶えてみせる。今の欲望に満ちた世であれば容易い事だ)


 マリードの目が野望に燃え上がる。同じく力を得て野心に身を焦がすマイケル。



 大きな闇が打ち払われた夜。しかしそれを為した者達を嘲笑うように、既に新たなる闇が蠢動を始めていた……




Case6に続く……

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