赤い約束

一ノ瀬 愛結

第1話 プロローグ

「もう、笑い事じゃないんだから!」

あたし―片桐美月かたぎり みづきは、両手で机をたたく。

ミステリー研究会(略してミス研)の狭い部室に怒鳴り声が響き渡った。

明日から、1ヶ月半の夏休みが始まる、一年のなかでもっとも開放的で

心躍る日のはずなのに…

「まぁまぁ、落ち着いて」

笑いをかみ殺しながら、親友日高花菜子ひだか かなこが飲みかけの

麦茶を差し出す。

あたしは、それを一気に飲み干した。

「で、美月は何も知らされてなかったって訳ね」

「…おやじ様は、取引先の接待だって言ってた…」

あたしの仏頂面を見て、花菜子がまた笑った。

もう、他人事だと思って!

あたしの口から小さなため息が零れる。

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