記録17:リパーシェで書かれた本


 意気揚々に言ったもののはっきりとした案は思い浮かばなかった。ともかく、誰かに助けを求めなければならない。それにしても政府の役所がどこにあるのか。私達には分らない。助けを得るために誰かに話しかけるべきなのだろう。しかし、一体誰に話しかければ良いのだろう。私は疑問と共にそんな状況に不安を感じ始めた。私の横に居たベルチェに目を向けて様子を見た。彼女は私の目線を感じたのか、私に笑いかけた。


「ユエスレオネにはもう帰れないんでしょうか。」

「そうとは限らないらしいよ。」


名前の分からないクローマ生は私が答える前に答えた。彼女は同時にガラス・ウィンドウの向こうの本らしきものを指した。私とベルチェは近づいて、それを見た。相変わらず読めない文字が表紙に並んでいたが、今までの文字列とはそれは違う点があった。


「見ろ、リパーシェだ!我々は異世界に居たのでは無かったのか?」

「それは知らないけど、どうやらリパーシェが書かれている本はこれだけらしいね。」


 クローマ生はそれを見て書店の中へと入った。私達も彼女についていった。大半の商品はタカン語のような言葉で書かれた本であったが、眼の前の本には確かにはっきりとリパーシェが書かれている。そして、見覚えのある顔がその本の表紙にあった。

 タカン人のような顔立ちの少年がメモを片手に困った表情を浮かべ、銀髪の少女が彼の横から何かを教えようとしている。


「ヤツガザキ・センとアレス・シャリヤ……?」

「彼らを知っているのですか?」


 私はベルチェの質問に頷いた。彼女たちは私の答えに奇妙なものを感じたのか、目を瞬いていた。

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