記録13:ヴィデュン者


 少女は私を暫く見つめてから、四之布を振った。彼女の目元はエキゾチックで、黒髪はリパラオネ人特有の髪の煌めきを残していた。彼女は袖で顔を隠した。


「悪魔の顔は見れないよ」

「はぁ……馬鹿ヴェフィス人が……」


 ベルチェは彼女を見ながら、いきなり起こされた人のように驚いていた。彼女の表情は好奇心よりも大きい不可解を感じる感情に満たされていた。

 私自身はこうなる前に、なんとなくこれを理解していた。ここに来てから、会った人間にまともな人間は居なかったから、次に会う人間も予測できただろう。やはり、まともな人間というのはステデラフから続く革命理論を実現可能にした私のみだ。

 しかし、本当に奇妙なのは彼女の発音であった。彼女の発音はまるでデュイン人のように大胆だった。ここまで来ると上の理解も自ずと皆分かるであろう。彼女が悪趣味な意味不明体のクローマ学生であるという事実だ。


「君は何をしているんだ?」

「こいつが意味のわからない言葉を喋ってるんだよ!」


指さされた男性は、私達の会話を聞いて様子見していた。その内容は理解できてないようだった。


「そんなのはどうでもいいから、ここを去ってよ!」

「なぜあなたは彼女たちのことを嫌うのですか?」


 私の隣のベルチェはヴェフィサイトのクローマ学生もどきに訊いた。彼女はベルチェの代名詞の使い方を風変わりに思ったらしく、不思議そうにベルチェを見た。私は申し訳なさそうに様子見している男をゾシュハーヒウケを追い払うようにしっしっと追い払って、四之布を着る彼女へと顔を向けた。


「君はイーステシュリニアーなの?」

「……ええ、でも、彼女はフィシャ派ですから、シャーツニアーです」


 彼女はベルチェを値踏みするように見ると、袖で隠していた顔を見えるようにした。しかし、分かったのは彼女がヴィデュン派ということだけだった。

 彼女の顔は怪訝に思う心のままを表していた。


「なんで革命家がシャーツニアーと歩いてんだ……?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る