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地面に崩れて座っていた。というより、座ったまま心は死んでいた。あんなことがあったのだから、心が死んで当然だろう。
しかし、私が今いるところは何か奇妙だ。誰も私をみて敬礼をしないのだ。奇妙に思って周りを見てみた。ガラス張りの建物があって、ガラス越しに人が私を興味深そうに見ていた。彼らは客だろう。ガラス窓の中の美味しそうなパンがその証拠だ。すると、私のお腹がなった。私には私のいるところとか、どこでパンが買えるのかなどはさっぱり分からなかった。
とりあえず、自分の持ち物を確認してみようと思った。100レッジュ札が3つあって、銃と連邦共産党党員証を持っていた。300レッジュもあればパンくらいは食べられるだろうと思った。「腹が減っては戦はできぬ」というから、腹を満たさねばなるまい。人民革命の指導者たるユエスレオネ共産党党首である私が飢え死んだなどとということがあれば、大恥どころではない。指導者たるもの、全ての事象に万全でなければならない。
私は立ってキュロットをはたいて、砂ぼこりを落とした。長い間座っていたからか、人々は私を奇妙に見ていた。そんなことより奇妙なのは店の看板の文字であった。その文字はリパライン語ではない。それはタカン語の文字のように見えたが、タカン語が読めるのに私は読めなかった。そんなことはともかく、私はラネーメ人のような人間が商っているその店に入った。
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