君のご飯が食べたい


 今時ね、男の人だって、ご飯を作れた方がいいと思うよ。

 そう君が言っていたことを、今さら思い出す。


 君の料理が一番美味しいからね、と僕は笑った。夫婦は共同作業だから、私だけ料理をするのはオカシイと言うので、僕もしぶしぶ料理を憶えた。


 惚れた弱みってヤツだった。

 不器用ながら、君のレシピを少しずつ憶えていったんだ。






「美味しいです」


 君は言った。


「どなたか、存じませんが」


 よかった、と僕は答える。懐かしい感じがしますと君が言う。それだけで充分。君に教えてもらった煮魚だ。できれば、もっと早く作ってあげたらよかった。


 ――君が僕を忘れてしまう、その前に。


「おいしい」


 その言葉があるから、次も頑張れる。





 

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第47回テーマ「食べる」でした。

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