第40話

 この日は農村のカンポ村で泊まることになった。


 一応宿屋はあるので、野宿は免れることが出来た。


「いえ、私達も払います」

「いいんだって。ここは俺に払わせくれ」


 乗ってきた馬車の御者であるグランが、宿屋代を払ってくれるというのだ。


「嬢ちゃん達には前に貰った金に余裕あるからよ」


 前に貰った金というのは、ソフィア達が最初のクエストの時に貰った報酬金を手伝ってくれたグランに分け与えた金だ。


 グランはあまりにも大きい金にソフィア達が利用する際は無料にするサービスをしていたのだが、報酬金の方が圧倒的に多く、宿屋代を支払ったとしても余裕があるのだ。


「ねぇソフィア、ここは奢ってもらおうよ」

「うーん・・・でも」


 ココナは奢ってもらうことに賛成のようだが、ソフィアは流石に悪いと考えているのか渋っていた。


「ご主人、2人部屋1つと1人部屋1つ頼む」

「あい・・・、あんた達がらんばーど?の討伐をしてくれた者じゃろ?なんならタダでいいよ」

「え、いや」

「部屋はこっちじゃ」

「・・・・・・・・」


 宿屋の婆さんはニコニコとしながらそう言って、部屋へと案内を始める。


「ソフィア、私達は何の話をしてたんだろうね」

「・・・・・・・・」


 本当に今までのやり取りはなんだったんだろう。



 ☆     ☆     ☆



 夕食は村長さんが採れ立ての野菜を料理してくれ、皆で美味しく頂いた。


 いつも通りなら、お風呂に入り寝るだけなのだが。


「シャワーしかないし、お湯も出ない」


 この村はお風呂という上等な物はないので、川の水を引っ張って来たシャワーしかない。


 汚れを落とすにはそれだけでも十分なのだが、今まで暮らしていた場所が場所なので、ソフィアは悲観していた。


 ソフィアは裸になりタオルで身体を隠し、俺と並んで水しか出ないシャワーヘッドを見つめていた。


「・・・・・・仕方ないよね」


 ソフィアは落胆したまま、シャワーのバルブを開ける。


「ひゃう!?」

「にゃっ!?」


 予想以上に勢い良く出てきたシャワーの冷たさに俺達は驚いてしまう。


 今の季節は夏なのでまだマシだが、これが冬だと考えるだけで嫌になる。


「は、早く洗っちゃお!ほら!リアンも」


 ソフィアはしゃがんで俺をシャワーに当てて、足の泥を落としてくれる。


(洗ってくれるのはありがたいが、少しは隠してくれ!)


 最近は俺がリアン・ユーベルと分かってからは、身体を隠すようにしてくれたのだ。


 しかし、今は早く洗って出たいという気持ちが優先し、俺の位置からは足の付け根辺りが見えてしまっている。


 俺は目を瞑り下を向くが、ソフィアに首回りを洗われて、上を向かされる。


 少し薄目を開けると、ソフィアの胸が隠されていない状態で目の前にあった。


(タオル落ちてるしっ!!早く終わってくれ!!)


 俺は終わりと言われるまで、目を瞑っていることにした。


「これでよし!リアン、先に部屋に戻って・・・~っ!?タオル落ちてるっ!?」


 ソフィアは俺の身体をサッと拭き終わると、やっと身体を隠していたタオルが落ちていることに気が付いた。

 俺は何か言われる前にそそくさと部屋に戻ることにする。


 そして、先にシャワーを浴び終えたココナがいる2人部屋に移動するが。


(・・・ドアが開けられん)


 部屋の前に来たが、部屋のドアを開けられないことに気が付いた。


 とりあえず、ドアを普通の猫のようにカリカリと引っ掻いてみる。


「ん?・・・あ!リアン!!」


 すると、部屋の中からココナがドアを開けてくれて、中に招き入れてくれた。

 ココナは下着のような格好をしているが、これがココナの寝るスタイルらしい。

 ソフィアがシャワーに行く前に聞いたところ、自宅だとパンツしか穿いていないようだ。


「ふっふっふっ・・・」

「にゃ?」


 俺を招き入れた後、ドアを閉めたココナから不気味な声が聞こえた。


「リアンちゃん。やっと2人きりになれたね~」

「にゃ・・・」


 ココナから醸し出される威圧感に俺は後退る。


(そうだった。ココナは猫をもふりたくなる性質があったんだった。いつもはソフィアに守って貰っていたが、まだしばらくはソフィアは帰って来ない)


 ココナは下着のような格好をしているので、あまり視線を向けたくはないのだが、そうは言ってられない。


 俺はいつ襲われてもいいように、構えを取る。


「とやっ!!」

「にゃ!」


 ココナが長い金髪を揺らしながら俺に向かって飛び付いてくる。

 俺はココナの腕を上に抜け、ココナの頭を踏み台にして、ココナの後方へ降り立つ。


「まだまだ!!」

「にゃ!」


 だがココナもすぐに反転して、また飛び付いてくる。

 俺は飛び付いてくるココナの股下を掻い潜り、後ろへと回る。


「ブースト!!」

「にゃっ!?」


 振り向いた俺の目の前でココナの姿が突然消える。


「に"ゃ!?」

「捕まえた!!」


 いつの間にか後ろに回っていたココナに俺は捕まってしまった。


「リアンちゃん、油断したね?前のココナと違って身体強化を使えば、これぐらいの速度で動けるんだよ」

「にゃっ!にゃにゃ!!」


 ココナの手から抜け出そうと身体を捻るが、身体の大きさが違い過ぎて、まったく意味をなさない。


(ココナの奴、身体強化してまで俺をもふりたいのか!!)


 俺は諦めて、身体の力を抜く。


「それでは・・・・んん~~!!気持ちいい!!シャワー浴びた後だから、少し湿ってるけど、気持ちいい!!!」


 俺はココナにぎゅっと締め付けられる。


(く、苦しい!)


 俺は締め付けられて、息苦しくなってしまう。ココナの控えめな胸も当たっているが、今はそれどころじゃない。


「このもふもふ・・・堪らないっ!!そうだ!!」

「にゃっ!?」


 ココナはあろうことか、着ていた下着を脱ぎ出した。


 俺の目の前にココナの慎ましい胸と無毛の足の付け根が晒される。


「もふもふはやっぱり全身で感じないとね!!」


「にゃにゃっ!?(なんですとっ!?!?)」


 ココナはベッドに俺を両手両足を器用に使って抱き付いてくる。


「んん~~~!!!最高っ!!!!」


(ソ、ソフィア!!早く助けてくれ!!!)


 俺の願いが届いたのか、ドアが開く音がした。


「コ、ココナ?裸で何してるの?」


 ソフィアの戸惑う声が聞こえたくる。どうやら俺の姿が見えていないようだ。


「もふもふ!!」

「もふもふって・・・リアンっ!?」

「にゃ、にゃあ」


 俺は疲れきって、力の無い声で返事をする。


「コ、ココナ!離してっ!おと・・・じゃない。猫相手でも裸で抱き付くのは良くないよ!!」

「でも裸だからこそ、このもふもふの良さがわかるっていうもの!!ほら!ソフィアも!!」

「きゃあ!!」


 ココナは神速の手捌きで、ソフィアの着ていたワンピースのパジャマと下着を一瞬で脱がせてしまう。


「もふもふ~」

「あ、ちょっ!コ、ココナ!リ、リアンがっ!」

「・・・・・・・にゃう」


 あろうことか、ココナの慎ましい胸とソフィアの豊かな胸に挟まれてしまう。


(これは何という天国・・・じゃない。ご褒美だ・・・じゃない。ヤバい、俺もおかしくなってきてる)


 俺が少しでも動くと、2人の胸が形を変える。

 いや、ココナが動きっぱなしだから、2人の胸は常に形を変える。

 特にソフィアの胸は・・・。


「リ、リアン!尻尾!!変なところで動かさないで!!」

「にゃっ!?」


(ど、何処に俺の尻尾はあるんだ!)


 俺は混乱している中、尻尾の所在を探ろうとするが、よく分からない。

 ただ、乾いてきたはずの尻尾が濡れているような気がする。


「ちょっ!コ、ココナ!いい加減に」

「もふもふ~」


 しばらくの間、この天国のような地獄のような体勢が続くのだった。

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