最期の日

 長い戦乱の世を治めた皇帝が居た。

 名君と讃えられていたが、それは側近も優秀だったからだ。近隣諸国への対応も含めて進言に対し素直に耳を傾ける。理想的な国家だった。


 しかし、どれほど手を尽くしたとしても反乱分子が完全に消えることはない。対応に追われる日々が続いている。そんな折にひとつの兵器が完成した。これを使用してしまうと相手国に甚大な被害を与えることができるのと同時に自身の国にも無視できない傷を残すことになってしまう。


 側近たちの交渉も虚しく本格的な戦闘が始まってしまった。

 帝王は民の非難を最優先事項に据える。皆はあの兵器を使うからかと思い、反対の声をあげていた。


 初めて帝王はみ皆の声を無視する。

 一部の側近は命を受けて遥か離れた土地の開拓を行っていた。

 護るための戦いだった筈が、民を脱出させるためというのは如何なものか──内部からも反乱が今にも噴出しそうである。


 最期の日──帝王は改めて開拓を行っている土地への移民を命じた。渋々従った者が大半だったが、現状の豊饒な土地を手放すことを快く思わない一部の側近たちが帝王を刺す。


 その瞬間、例の開発兵器が発動した。そして帝国周辺諸共の土地が焦土と化す。

「豊かさをとるか平穏をとるかの選択を間違えおって」

 これが彼の最後の言葉だった。

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