業績

 業績が飛びぬけていい会社があった。

 エリートが集まっているわけではなくそれまでは凡庸であり、新入社員も選り好みしたわけではない。


 社長は新入社員が運気を運んできたと勘違いして好待遇にした。

 しかし、それでは既存の社員は面白くない。改善を求める運動を起こした。


「数字をあげろ」


 一蹴されてしまう。

 そこであきれ果てて転職する者も居た。

 悔しくて見返してやろうと頑張る者も居た。


 売り上げは順調どころか去年度の3倍ペース。

 気を良くした社長は、頑張った社員にも給料をアップした。


 上手く回るときは、どんなことをしても成功するものである。

 どんどん会社は大きくなっていった。


 そして事件は起こる。

 遥か遠い海外で大規模な地震が発生したのだ。

 あまりにも離れているため、直接的な被害は皆無だった。


 ところが、何故か業績が悪化する。

 社員はよくこれまでどおり働いていたにも関わらず。


 資金繰りが怪しくなってくる。

 社員の給料という固定費は、一度上げたら下げることは難しい。


 隣の会社に目をやると、急に業績が伸びているようだった。

 首をひねるも理由が分からない。

 散々絞った挙句、去年の新入社員が一人その会社に転職したことが原因ではないかと会議で結論付けた。

 そうなると、如何にその社員を取り戻すかにかかってくる。


 苦しい財政状況の中、なんとか奮発してヘッドハントしたのだが、特に好転することはなく倒産してしまう。


 再び別の場所で巨大地震が発生した。

 今度は、隣の会社も業績が悪化。しかし、更にその隣は急に良くなった。


 この局地的な幸運は、その後も巨大地震ごとに移動する。


「今回の地震で、また地軸が少しブレたようです」

 そう、ニュースキャスターが伝えている。


 運気の土地は地軸と区画で制御されているのかもしれない。

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