第22話
結論から言えば連休は取れた。
だが代わりに上司と罵り合い、同僚たちには空気が読めねえなと嫌味を言われたが、そんなこと知るかってんだ!
当然の権利を行使すれば皆から文句を言われるこの世の中の方が間違っているのだ。
俺は立場は社畜という名の奴隷だが、心まではそこまで落ちてはいない。
俺は人間なのだ。
人間が人間同士で決められた約束事を果たしてくれと頼めば罵倒されるのなら、それは人ではない。
それ以下だ。
あの会社の奴らは全員が獣だ。
畜生だ。
だが俺は違う。
ゆえに俺は人であることを証明するため、また実感するために、車に乗りこみ、リキッドを購入に向かっている。
「ああ仕事以外で外に出るのは久しぶりだな」
車窓から見える景色をやや濁った瞳で見ながらそんなことを言う染谷は疲れきっているように思えた。
俺がリキッドを買いに行くことを染谷に話すと、やや悩みながらも搾り出すように言った。
「俺も行ってもいいかな?」
わざわざ聞くなよ。
いまさら何の遠慮があるってんだ?
中学からの付き合いで、共にハーブとリキッドで騒ぎまくった仲だろうに。
気恥ずかしくて口には出せないが親友といってもいいくらいの間柄だろ?
俺たちはさ…。
だがそれは言えなかった。
親友とも言える仲の俺にさえ、オズオズと怯えるように聞いてくる染谷の心を見れば、あいつがどんなに追い詰められているかは如実にわかる。
「ああ、いいぞ…」
素っ気無く答えた言葉の裏に込めた悲しみは届いただろうか、届いていないだろうか?
まあそんなことはリキッドを入れればきっとわかるだろう。
唯一の親友に思った気持ちもリキッドがもうすぐ手に入ると思えば半減されていくことが嬉しいのか悲しいのかわからなくなったが。
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