星を見る人たち.9

二人の会話をじっと見ていた寧子が、ふと口を開く。

「ねえ、すばる。独自性のある魔術とか、強力な魔術を使う家系って、ウチに入ってようが入ってなかろうが、登録されてるよね」

特殊な魔術師ほど自分の素性を隠そうとするものだが、限度がある。僅かな痕跡でもあれば、魔術にかかわる人間が必ず見つける。事務所のような私的機関だけでなく、公的機関もある程度魔術に関係するような時代だ。社会情勢に合わせるように秘匿用の魔術が進化しているわけでもない。ミオは驚いた顔をしたが、すばるは頷いた。

「ミオみたいな魔術って、登録されてる?」

すばるが硬直するのを見て、ミオはがっくりと肩を落とした。感情の変化が目まぐるしい。ミオを見て、すばるが慌てて取り繕ろおうと手を振り回す。

「ちが、違うのよ?確かに登録されてないけど、肉体に自分の魔力を融合させて体を丈夫にしたりとか、ミオちゃんみたいに皮膚の内側から魔力で作った道具を出したりとか、そういう魔術は確かにあるのよ?」

寧子はその弁明に頷くが、冷たく畳みかける。

「あるけど、ミオみたいなのはなかったわよね。私たちの能力と同じような能力を持ってる人がいたら困るからって、毎日調べてるのはあなたでしょ」

言ってしまうのは気が引けたが、言わないわけにもいかない。希望を持たせて先延ばしにする方がかえって「裏切られた」という気持ちが強くなる。そんなことはしたくなかった。

ミオが崩れ落ちる。

「……でも、起こったことは仕方ない」

何度か唱えながら、ミオは立ち上がる。

「すばるさん、ここで、何か私が手伝えることってありますか?」

寧子とすばるが顔を見合わせてから、すばるが笑顔で答える。

「いっぱいあるわ。よかった、魔術の使える人手はいくらあっても困らないもの。歓迎するわ。……でも、一つだけ聞いてもいいかな?」

ミオが首をかしげる。

「なんですか?」

すばるは、まっすぐ机の上を指さした。

「ここに来てからさっきまでずっと弄ってたあのルービックキューブ、一体どういうものなの?」

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