双焔の黄昏(トワイライト)~女の子に転生したらもっと大変でした~

夜空りえる

0.プロローグ

ある日、俺は長年してきた仕事を引退した。その仕事は最狂戦士《ベルセルク=エクストラ》である。俺は元最狂戦士の一人でもあった。


  最狂戦士とは────十人程の実力者が集い皆が狂人と呼べるほどの強さ持つ者。その中で俺は比較的狂人と言う分類では一番薄かったとも言うべきだろう。強さ的には五番目を争うほどで至って普通。最狂戦士は国を支える一つ極秘機関組織でもある。他に


  色んな軍団はこの世界には山程存在していた。




  最狂戦士を二六歳の若さで引退した俺は闘うことを辞めひっそりと辺境だった村で暮らすことにした。


 この年だと同僚だった仲間達は結婚したりして幸せを掴んでいた。


  俺も結婚までとはいかないが村の若き村長としてそれなりに幸せの生活が出来ていたと思う。


 その村で好きな人だって居たさ。何度かアプローチだってしたり、デートに行ったりと何時しか一緒に住むほどまで進展出来た。


  村の子ども達たちと一緒に遊んだりと交流を深めたり元最狂戦士だと言うことも知らずとっても幸せだった。なのに......




「ねぇアル。最近、私嫌な予感がするんだけど」




「急にどうしたんだシルヴィー?」




  俺は急に変なことを言い出したシルヴィーに疑問に思う。


 後、紹介が忘れたな。俺の名前はアルフ・ライザートだ。このライザート村の村長でもある。


  そして今、俺と話しているこの女性が俺の彼女シルヴィア・ストラトス。シルヴィーとは俺が言っている愛称だ。


  この廃墟した村に来たときに始めて出逢った村人の一人。出逢った時は警戒していたが今では穏やかな笑顔が出来てとても可愛い。それは置いといてシルヴィアの言葉がどういう意味か聞くことにする。




「嫌な予感ってもしかして魔物とかそんな類い?」




  この村では魔物など生息していない安全地帯。


  あれから二年は経つけど見た覚えはない。それじゃあ他になんだろう?




「そうじゃなくてね。アルも私の力のことを知ってるでしょ?ここ最近、その力が探知するのよ」




  彼女は魔法とは違う不思議な力の持ち主だ。


 その力の効果は様々で魔物やそれ以外の何かも探知できる。


 この力が本当に探知するだけの能力なのかはわからないがその力のせいでシルヴィーは今まで虐められていた。


  だから俺は彼女を守ったんだ。それが切っ掛け───




「確かにシルヴィーがそう言うのならそうなんだろう。わかった。今日一日は隣街で調達をせずに村に残るよ」




  これから隣の町から武器やら小道具と食品などを調達しようと思ったが村の方も心配なので残ることにする。


 村の人達は俺が強いって事を知ってるし良く頼りになる村長とか言われる。


  前村長さんにはお世話になったんだから俺がこの村を支えないとな。前村長のおっさんは師匠弟子関係なものだった。


 だがつい一年前にポックリと逝ってしまった。おっさんはとっても強くて俺は一度も勝った覚えがなかったな。




「でも気を付けてよね。じゃあ代わりに私が調達してくるから」




「ああ。頼むよシルヴィー、愛してる」




「私もよアル。愛してる」




  シルヴィーが出掛けるので口付けをしながら抱きつく。まさかこれが彼女との最後の別れとはこの時は思ってなかった。






  シルヴィーが隣街に出掛けてから今は昼頃。俺は畑で農民と一緒に作物を耕している。村人からの信頼も得るために俺は村人の仕事を一緒にする。




「「あーアルフだ。アルフ一緒に遊ぼ!」」




  子ども達が俺の名前を言ってくる。今日も元気が良いな。でもどうしよう。今は畑仕事してるし遊んでる場合でもないし。と思ったが。




「行ってやりな」




  農民のおばちゃんがそう言う。おばちゃんは「貴方は村長ですから子ども達と遊んでやりなさい」と言われごもっともだと思う。




「良いのですか。ありがとうございます!」




 おばちゃんに感謝し、子ども達の方に向かう。




「遅いよぉ~アルフ」




「アルフさんごめんね。この馬鹿が」




「馬鹿ってなんだよ!」




「こらこら喧嘩しないの」




  あはは.....今日も凄く元気があるな。この元気がある男の子がゼノンで言い合っている女の子がミサで仲裁している女の子がノエル。この三人は唯一この村にいる子ども達で親が居なく孤児院で生活している。一応俺とシルヴィーが面倒を見ている。




「今日もお前達は仲が良いな」




「「違う!」」




  これは見事ハモった。俺とノエルはクスクスと笑う。本当に仲が良いんだが。そうして俺たちは子ども達に連れていかれ毎度のこと遊んでやっている。俺は今幸せだ。いずれシルヴィーと結婚し子どもも授かりこの子達の成長も見届けたい。何時かはこの村は街と化にしたいと考えている。そう思った瞬間、ゼノンの様子が


  可笑しい、どうしたんだ?




「ゼノン!どうしたって......な!」




  ゼノンが村の外を見ていたのだがその方向を見ると一匹の獣の影が見えた。ドラゴンだ。しかも神話クラス並の。俺が見たのはただの竜ではなく竜神。大都市の街を滅ぼすと言われているのを聞いた覚えがある。




  何故、この村に!魔物だって現れない地帯だぞ。なのにあれは......。


  やはりシルヴィーが行ってた予感が的中してしまったな。先ずは村の人達を安全な場所へと誘導しないと。と動こうとしたら竜神は子ども達に向けてブレスしようとする。




 チッ、クソォ闘うしかねぇのか。




  俺はかけ走ってた。自分の体なんてこの際どうでもいい。先ずは子ども達を助けるのが優先だろうが!




「お前達逃げろ!」




  子ども達は竜神に怯えて俺の声が届いていないのか動こうとしない。足が震えていてこのままではブレスに巻き込まれる。俺は子ども達を庇い、力を上手く使用出来ずに攻撃をくらう。




「ぐあぁ!」




  地面に倒れる俺。大量の血を流しながら最後の力を振り絞って。




「にげ...るん...だ。それで...村の人を連れて隣街にいるシルヴィーのところに...行ってくれ...」




  ようやく今の状況を理解したのかゼノンは怯えながらも「逃げるぞ」と言いミサとノエルは「でもアルフが」「しっかりしてよ、アルフさん!」と泣きながら逃げようとしない。最後にこれを言っとくか。




「ゼノン、二人を...連れていけ!」




  その言葉を聞いたゼノンは無理やり二人の手を引っ張りこの場から逃げる。はあ~完全にやらかしてしもうた。力を使おうと思ったらもっと上手く出来ただろうに。あの力をもう使いたくない俺の心の甘さがこの事態を招いたんだ。自業自得だな。シルヴィー嫌、シルヴィア、ごめんな。俺.....先に逝くわ。竜神の攻撃をもろに食らった俺はもう助からないだろう。段々意識が薄れていく中、最後に幸せな生活が出来て良かったなと感じながら俺は息を引き取った。








 と思ったんだが......何故か今、俺は。




「産まれたぞ。良く頑張ったな」




「そうね。あなた」




  俺の顔に近づく一人の女性。とても可愛く綺麗な髪を伸ばしている彼女。はて?どこかで見たことがあるような?




「あなたの名前はソフィアよ。私の可愛い可愛い娘。」




  ソフィア?後、それに娘!何それ、今のこの状況はなんだ?俺はこの状況に意味がわからず戸惑う。




「オギャャャ!(何ですかこれーー!?)」




  俺の口から出る声。もしかするとこれは俺、赤ん坊としてしかも女性として転生しちゃたパターンすか。マジかよ。




  俺は竜神に殺され、その後女性として転生してしまった。しかも、父親と母親って俺の生前の身内と言う最悪のパターン。あ~あ死ぬんじゃなかったな。これは元最狂戦士が転生後ある意味最強姫が誕生してしまい厄介でとても大変な物語である。



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