久能氏春はとある性癖に目覚めた十六歳の少年です


 久能氏春は、魔族との最終決戦に参加していた地球共和国の義勇兵でした。

 本来ならば、高校に通っていてもおかしくはない十六歳の少年なのですが、人類の危機という事でいてもたってもいられなくて義勇兵として参加していました。

 久能の戦闘力は高く、魔族の十二使徒には及ばないまでも、中級の魔族程度ならば倒せるくらいの強さでした。



 ヴァリアッテ・スノーホワイトが永眠させられていた館の付近で、久能は十二使徒であるザンダーク公爵と戦うも傷を負い、からくも館の中に逃げ込んだのです。

 そうしてとある部屋でヴァリアッテ・スノーホワイトが封印させているのを見つけました。

 ヴァリアッテがあまりにも可愛い女の子であったため、久能は魅入ってしまいました。

 そんな久能は追ってきたザンダーク公爵の攻撃を受けて、偶然にもヴァリアッテの唇を奪ってしまう事になりました。

 そうして、ヴァリアッテは王子にキスをされた白雪姫のように目を覚ましたのです。

 覚醒したヴァリアッテに蹴られ、久能は意外な事に、この女の子になら蹴られても悪くはないと思ってしまったのです。

 そして、もう一蹴りで、その思いが決定的となりました。


 ヴァリアッテは久能と話そうとしていたところをザンダーク公爵に邪魔されたため、ザンダーク公爵を手始めに、魔族、地球共和国軍の者達全てを久能と話がしたいがためだけに軽く半殺しにしました。

 そして、久能が何者なのかと訊ねてきたのです。


 久能は正直に答えました。

 義勇兵である事、魔族との戦いで死ぬ事も覚悟していた事を。

 その話を聞いて、ヴァリアッテは決めたと言いました。


「ならば、余がこの戦争を終わらせてやろう! 休戦の条件は簡単だ。余は久能が欲しい! 久能にはそれだけの価値がある!」


 ヴァリアッテはそう言い、久能を通じて地球共和国の大統領に伝えたのです。


「地球人の久能氏春を余に差し出せ。氏春は余のものだ。これが休戦の条件だ」


 地球共和国は喜んで、久能氏春をヴァリアッテに差し出し、魔族と地球共和国は休戦したのです。



 人身御供となった久能氏春は不幸どころか、幸せでした。

 魔王ヴァリアッテ・スノーホワイトの傍にいられる事に喜びを感じるだけではなく、ご褒美とばかりにまれに軽く足蹴される事に幸福感を感じていたりするからです。


 そうです。

 久能氏春は、ヴァリアッテの足蹴で満たされるような人間になってしまっていたのです。




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