ひとつだけ聞いてほしい

私は、とても醜いものになったようだ

芋虫か、蛾か、枯れ葉か、あげようにも悲しく醜い人間と成り果てて

人間かどうかも分からなくなった

正しいが跋扈する世の中に、私は異端であった

今日は背中から無数の槍が生えていた

じくじくと痛いそれは荷物の重さなのか重責故の疲れか

私には、どちらも正解で不正解であった

言葉をどこかに残したいのに、残せない

なにが悲しいのだと言われれば、すべてが悲しい

行為、結果、無、行動、強さ、弱さ、私は生きてはいなのだろうか

生きているはずなのに死んでいるのだ

死を今なら受け入れられる。だが怖い

そんなことをしたとして、結果を帳消しにはできないことを知っているからだ

いつまでも、いつまでも、このしこりは消えはしない

忘れはしない

今日も呼び出されるのを待っていた。故人にだ。

後悔が身体を蝕む。まるで錆びを、ぱりぱりと剥がすように壊れていく

それを正常化するには時間が足りない。生きる術がない。

悲しかった。無力な自分が悲しかった。

こんな時間に私は嘆いている

もう少し強く、弁も立ち、そう強ければ逆らえることもできたのに

私は大声も怒鳴り声も嫌いで何も言わなかった

それが嘘であると言えず、頭の中は「可哀想な人だ」としか思いつかなかった

「もっていかないでくれ」私の矜持を

思っていても言えなかった。それを失うことで私の役目は思ったのだ。

いや終わっていなかった。継がれる言葉と残された言葉が私を縛る

『私にすべてを任す』なんという呪い

聞いた瞬間、私に電撃が走る。私は舞台から降りようとしているのだから

今更、そんな言葉を告げられても私の手元に亡骸はない

とられてしまったのだから、当たり前だ。

悼む心は骨がなくともいいという。それはそう思う。私は後悔している。

強く出れなかったこと、最期まで見るいう力、伝える努力、全てを私は放棄した。

もちろん、相手が泥酔状態で会話が不可能だということも含め、それでも私は弱い。

大人だね、そんな言葉で片付けられるか。私は弱い。強くない。事を荒げたくなくて喋らなかっただけだ。

優しい大人は「新しい目標を見つけて生きるといい」と言った。

その通りだ。それに救われた。だが、私は醜い。突如、襲われる恐怖が後悔が身体全体を支配して、お前は不甲斐ない奴だと叫ばれる。

そうだ、私は季節を楽しめず、好きな桜さえ「綺麗」と思えず、桜の唄を思い出しながらも聞くのは「桜の下で死ぬことを望み、桜の下に死骸を埋めてほしい」そんな歌ばかりだ。

だから、ここに記する。

誰か私を桜の下に埋めてはくれないか。

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