斬られ役、頭を悩ます


 175-①


 ショウシン・ショウメイとの戦いに決着をつけた武光とイットー・リョーダンは床に突き立つショウシン・ショウメイをジッと見据みすえていた。


 時間が止まったかのようにジッと動かない武光達を見て、ミトが思わず叫ぶ。


「二人共何をしているの!? 今のうちにショウシン・ショウメイを破壊するのよ!!」


 それを聞いた武光とイットー・リョーダンはミトの方を向いた。


「…………ごめん、無理やわ」

〔…………うん、無理だ〕


「ええっ!?」


 武光とイットーの答えを聞いて、ミトは素っ頓狂な声を上げた。


「ちょっ、何を言ってるの!? 今の貴方の力ならショウシン・ショウメイを破壊する事だって──」

「いや、出来る出来へんの話ちゃうねん……壊したないねん」

〔うん……それは嫌だ、可哀想だ!!〕

「……は? ……はぁぁぁぁぁっ!? か、可哀想って……ショウシン・ショウメイが今までやって来た事は……」


 ミトの言葉に、武光は頷いた。


「うん、悪やな!! めちゃくちゃ悪!! 間違いなく悪!! ……でも、もうブッ飛ばしてしもたし……」

「だったら……」

「でもな、コイツをへし折って全部終わりにするのは簡単やけど、何かこう……上手く言えんけどそれは違うやろ……なぁ、イットー?」

〔うん、上手く言えないけどそれは違う〕

「いや、でも……!!」


 尚も食い下がるミトに対し、武光は小さく息を吐いた。


「そもそも、元はと言えば、こないな事なったんは、お前の先祖がしょーもない事やらかしたからやし……」

「そ、それは……ぐぬぬ」

「コイツをへし折るっちゅうんは、酷い事されてそれに文句言うて来た奴を力ずくで黙らせたってだけやんけ、しょーもないわ、そんなん」

〔うん、しょーもないね〕


 武光は目を閉じ、両腕を組むと、天を仰いでうなった。


「うーん、どうしたもんかなぁ? むむむ…………」


 頭から湯気が噴出せんばかりに頭を悩ます武光に対し、ショウシン・ショウメイが声を荒げる。


〔ふ……ふざけるなッッッ!! 貴様らの哀れみなど要らぬ!! さっさと……〕

「あー、もー、うるさいッッッ!! お前、人が考え事してる側でごちゃごちゃ騒ぐな!! へし折んぞコラァ!!」

〔いやいや、折っちゃダメでしょ!?〕

「あっ……せ、せやな…………なぁ、ショウシン・ショウメイ」

〔…………何だ?〕

「何か……ええ考え無いかー?」

〔我に聞くのかっ!? 我に!?〕


 まさかの質問をされたショウシン・ショウメイは即座に言い放った。


〔では、アナザワルドの一族を皆殺しにさせろ!! 手始めにアナザワルドの娘を──〕


“ペチンッッッ!!”


〔痛っ!?〕


 ショウシン・ショウメイは柄頭を武光に思いっきりはたかれた。


「アホか!! アカンに決まっとるやろが、ミトは俺の妹みたいなもんやし、国が滅びたりしたらいろんな人が困るやろが!! ……ったく、真面目に考えろお前は!!」

〔えぇ……〕

「マジでどないしよっかなぁぁぁ……むむむむむむむむむっ………あっ、そや!!」


 何かを思いついた武光は “ぽん” と手を打つと。ナジミに向かって叫んだ。


「ナジミ!! ヴァっさん達を今すぐ回復させるんや!!」

「は、はいっ!!」


 武光に言われて、ナジミはリヴァル戦士団の四人とミトとリョエン、そしてついでにヨミも治療した。武光に叩きのめされた衝撃で、ショウシン・ショウメイに操られていた三人は正気を取り戻していた。


「武光殿……助かりました!!」

「……すまなかった、武光」

「ホント、面目無いですー」

「いやいや、なんのなんの!! そんな事よりヴァっさん、目ぇ覚めたばっかりで申し訳ないんやけど、手ぇ貸してくれ!!」

「はい!! 私達に出来る事であれば喜んで!!」


 それを聞いた武光は力強くうなずいた。

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