妖姫、真意を語る


 157-①


〔た……武光!?〕

〔ご主人様!!〕

「武光!?」

〔た、武光さん!?〕

「武光君……!!」

〔フッカツッッ!? カラミタケミツ フッカツッッ!?〕


 勢い良く立ち上がった武光は、唖然とする仲間達をよそにヨミに詰め寄った。


「オイ、さっき言うてた『ナジミは操られてなんかいない』ってどういう事やーーー!!」

「それは……こっちの台詞よっ!!」

「うえっ!?」


 ミトは武光に抱きつき、胸板に耳を強く押し付けた。


「ちゃ……ちゃんと動いてる!! さっきまで完全に心臓も止まって冷たくなってたのに……」

「へ……? あっ、ホンマや俺……生きてる!? え? マジで!?」

「い、一体どうやって生き返ったのよ!?」

「いやいやいや、そんなん俺が知るかいな!! 今まで死んだ事も生き返った事もないし!!」

〔武光、傷は大丈夫なのか!?〕

「え……傷? あっ、そや……傷はっっっ!?」


 武光は慌てて腹部をまさぐった。確かにナジミ光の剣に腹部をグッサリと刺し貫かれたはずなのに、傷がどこにも見当たらない。

 いや、それだけではない……ナジミに刺される前に、魔王にボッコボコにされた傷や痛みも綺麗さっぱり消えている。


 武光は悟った。腹を刺し貫かれた後に、叩き込まれたあの光の玉……あれは攻撃ではない、あれは……癒しの力の塊だ。


 あの時、ナジミは『二度と私の前に姿を見せるな』と言っていた。本当に殺すつもりだったら言う必要のない台詞だ、『私を追うな』という事なのか……!?


「ナジミ……何でや……? ハッ……そうや、ヨミ!!」


 武光は改めてヨミに詰め寄った。


「お前やったらナジミが何で魔王について行ったか分かるはずや、吐け!!」

「ヤダ!!」

「やだってお前……吐かな最強最悪の拷問、《ワニ宇宙血の海焦熱竜巻砂地獄》やぞ!!」

「絶対ヤダ!! じゃぱにーずほらーでも熱々の大根でも何でも持って来いってのよ!!」

「頼む……!! 教えてくれ……!!」


 泣きながら頭を下げる武光を前に、ヨミは感じた事の無い感覚を覚えていた。胸の奥にまとわりつく奇妙な感覚……このモヤモヤは何なんだろう。吐いてしまえばこの不快な感覚はスッキリするだろうか?


 ヨミは思い切って話す事にした。


「あの女……何をするつもりかは知らないけど、魔王様にお仕えするフリして、ジョン=ラ=ダントスに封じられている水の神に会いに行くつもりよ」

「えっ?」

「ま、魔王城に直接殴り込みかけるよりは利口よね……バレたらなぶり殺し確定だけどね」

「な、何でそんな無茶を……!!」

「そりゃあ……誰かさんがビビり倒してるからねぇー? あーカッコ悪ぅー」

「ナ……ナジミ……俺の為に……!!」


 一度死んだ肉体を時間差で蘇生させる程の癒しの力を使ったのだ。凄まじい激痛にも襲われていたはずなのに……武光は拳をキツく握り締め、天をあおいだ。



「やはりな……そんな事じゃろうと思っておった」



「お……お前は!?」


 カンケイが ふたたび あらわれた!

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