才媛、秘策を繰り出す


 121-①


 退路の確保と城門への破壊工作をダントに任せ、リヴァル、ヴァンプ、キサンの三人は次々と襲い来る竜人達をぎ払いながら、三階建ての水竜塞の最上階、軍議の間に到達した。


 恐らく、この砦を守る将はこの中にいる。


 リヴァルは、左右のヴァンプとキサンに目配めくばせした。


「行くぞ、二人共!!」

「……ああ」

「さくっとやっつけちゃいましょー!!」


 リヴァルは、軍議の間の扉を獅子王鋼牙で破壊し、軍議の間に突入した。


「やれやれ、下等生物め……扉の開け方も知らぬのか」


 中で待ち構えていたのは、蒼い衣を纏った、竜人族の女だった。

 妖艶な笑みを浮かべる女に対し、リヴァルは獅子王鋼牙の切っ先を向けた。


「お前がこの水竜塞を守る将かっ!?」

「ふふふ、いかにも。わらわこそ、この水竜塞を守る水竜将、静寂のリュウビ、そして……!!」


 軍議の間の左右の壁をぶち抜いて、二つの影が現れた。


「私は風竜塞を預かる風竜将……疾風のリュウヨク!!」

「我こそは火竜塞を守護する火竜将……侵掠のリュウズ!!」


 リュウヨクが あらわれた!

 リュウズが あらわれた!


「ど……どうして貴方達がここにいるんですかー!?」


 左右の部屋から現れたリュウヨクとリュウズを見て思わず声をあげたキサンをリュウヨクは鼻で笑った。


「フン、貴様らの立場になって考えれば、打つ手はおのずと限られてくる……後から来る王国軍の為に、各砦への奇襲と離脱を繰り返して我が軍を撹乱かくらんし続け、我々の戦力を削り、消耗させるつもりだったのだろうが……そうは行くものか!!」


 四方八方から津波のようなときの声が響き渡った。リュウヨクがニヤリと笑みを浮かべる。


「フフフ……水竜塞は既に我が風竜塞の兵と火竜塞の兵によって十重とえ二十重はたえに包囲されている」


 リュウヨクの言葉に、リュウビとリュウズも続く。


「地竜塞に向かったと見せかけたわらわの水竜塞の将兵共も既に戻ってきておる」

「もはや貴様らに逃げ道は無い……我が友リュウソウの仇、討たせてもらう!!」


 竜将達はそれぞれに武器を構えたが、この窮地きゅうちを前に、キサンは動じるどころか、不敵な笑みを浮かべた。


「ふっふっふー……貴方達こそ私達を甘く見ない方が良いんじゃないですかー? 私にはとっておきの秘策があるんですよー?」

「秘策だと?」


 キサンは不敵な笑みを浮かべたまま、手にした鉄扇をパチンと閉じると、先端を三人の竜将達に “ビシッ” と向けた。



「貴方達を……力ずくでギッタンギッタンのボッコボコに張っ倒しますっっっ!!」



「……キサン、そういうのは策とは言わん」

「しかし、ここはそれしかないようだ、二人共……ガンガンいこう!!」


 リヴァルとヴァンプはそれぞれ獅子王鋼牙と崩山改を構えた。


「……我が友リュウソウの仇!! 一片の肉片すら残さず消してくれる!! ウオオオオオッッッ!!」


 リュウズの咆哮と共に、三人の竜将達は、竜身化しながらそれぞれの獲物目掛けて一直線に突進した。


 翡翠ひすい色の鱗を身に纏ったリュウヨクは両刃槍を小脇に抱えてヴァンプへと

 瑠璃るり色の鱗を身に纏ったリュウビは細身の鉄剣を構えながらキサンへと

 真紅しんくの鱗を身に纏ったリュウズは青龍刀を振りかざして、リヴァルへと


「「「くたばれ……人間共ォォォッ!!」」」


 三人の竜将達がリヴァル達に襲いかかった!!

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