第20話;エミリオ8(世界王)

「クーデター?誰だそのバカは」

そう叫んだのは騎士団長だった

「はぁ・・・想像は出来るけど、馬鹿だよね本当に馬鹿は死ななきゃ治らないかな?」


「エミリオ?私に手伝えることは?」

そう聞いて来たのはロゼッタだった。

「母上の召喚獣は白龍でしたね、フロラインは青竜、私が赤龍、ジョアンナ様は?」


「・・・私は紫龍よ」

「凄い、皆龍が使い魔なんですか?」

フロラインが驚く

「ルーナン王子は緑龍、王は黒龍だったと思います」

そう言ったのはジョアンナ


「騎士団長!前触れお願いする!新しい王が竜王と共に凱旋すると」

「!ハッ、かしこまりました」

騎士団400名、王軍600名はその名を受け王都に向かった


「古龍召喚、赤龍召喚」

「!え?2体?」


<久しいのう主よ>

8メートルの古龍

<古龍殿、主よお久しぶりです>

5メートルの赤龍


「これから王都に凱旋する、ちょっと威圧を込めたいので協力お願いする」

<主が邪神を滅ぼしてくれたおかげで、何処でも出現できるようになった、何でも言え>




フェルザン公国の城壁にはまるでヘリコプターが着陸できそうな広い場所が幾つかある

初代王が竜王を従えていたため龍が降りれる場所を城壁に作ってあるのだ。


初代王は世界王とも呼ばれ、その異名は世界に轟いていた





フェルザン公国、王の謁見の間

「まだ、王とルーナンは仕留められないのか!」

「はい、申し訳ありません、グレーデリ皇国から来た護衛騎士が強くて、数十人でかかっても敵いません!それに王の部屋に掛かっている結界が、強力で敗れません」

「くそ!あのよそ者、偽物次期王のせいか!くそっ」


ギガンテール侯爵はかねてから計画していたクーデターを実行していた。


「しかし、宜しいのでしょうか?王家の理(ことわり)を破って、次期王は封魔の剣を抜いたのに・・・」


この兵士は庶民なので、封呪の石の事をしらない、クーデターに参加している殆どの兵士は領地で準備をしていたので、王都の奇跡を見ていない、当初参加を表明していた貴族の殆どが裏切っているのにもかかわらず決行した、馬鹿である。



「遠征していた兵士が帰ってきました、総勢2万!出て行った時より増えてます」

「なっ・・・どうして」


各方面に散っていた兵士が集結してきた ためである。

そして、次期王の王旗を掲げていた。


そして、王都城壁のすぐ傍まで来ると、城壁の上の大砲を確認しながら距離を取り、騎士団長が魔法で声を響かせて言う


「次期王が、邪神を討伐された、それにより封印されていた竜王たちと共に王都に凱旋される皆歓迎の準備を!」






「大変です!ギガンテール侯爵!」

「なんで!竜王だと」


「ギガンテール侯爵!龍です竜の群れがこちらに向かっております」


「・・・・なな!」



バーン

謁見の間の扉が大きく勢いよく開けられた


そこには王とルーナンそしてウィリアムが入って来た

「ギガンテール侯爵!国家反逆罪で逮捕する」


扉の前に居たギガンテール侯爵の手下は、意識を狩られて倒れているのが見えた


何処からともなく現れた黒ずくめの集団にギガンテール侯爵は拘束される

「放せ!お前らは何だ」

「抵抗しない方が良いぞ、ギガンテール侯爵!その者達は闇ギルドの者だ、エミリオ殿の影の兵士達だよ、暗殺を得意とした、余り抵抗すると殺されるぞ」


「ひっ・・・」


顔面蒼白になるギガンテール侯爵


「馬鹿だ馬鹿だと思ったけど酷いですね・・・」

ルーナンが大きなため息をつきながら言う


「本当に、あの次期王に逆らうことを考える、凄いよな

”ベンデーソン国”を滅ぼし

ガジェット国国王、メレニアム・ドビッシーと

カザルフ帝国皇帝、ネストル・ヴァシーリエヴィチ

さらに魔王おもひれ伏した男に逆らうなんて、馬鹿?アホ?脳タリン?」

「はっはっは!ウィリアム殿、それは中々の表現ですな、的を得た言い方です」

王が愉快そうに言う


「え?カザルフ帝国皇帝?魔王?」


「まさか!知らなかったんじゃ」

ウィリアムが本当に驚く


「まさか、高位貴族ともあろうものが知らないなんて」

ルーナンが言う


顔面蒼白のギガンテール侯爵は蒼白を通り越して真っ白になっていた






城壁の上の兵士たちは殆ど抵抗なく投降、龍たちが城壁の上に降り立つ


戒厳令で家に籠っていた王都の民たちが外に出て、おとぎ話が目の前に本当になっいる事に目を輝かしていた

城壁が大きく開けられると、馬に乗ったエミリオを先頭に王城まで行進する


バンザーイの声!ありがとうの声!黄色い声!


古龍と赤龍は王城の城壁の上に降り立つ


謁見の間、王座にいた王が立ち上がりエミリオを迎える

「エミリオ!良くやってくれた」

王が手を取りギュッと握った

「大丈夫でしたか?」

「額の石が灰となって消えて、イヤーカフが外れる様になった時、あの体が清められるような感覚!神に愛されてるそう感じた」


完全に忘れ去られているギガンテール侯爵、拘束されて端に転がされている、左右には黒ずくめの男達。


「さぁ、エミリオ殿、王座に」

ルーナンが促す

エミリオが王座に就くとそこに居る全員が膝を折り、騎士の最敬礼をする。


入口に立って居たロゼッタはそっと、その場を出て、龍にエミリオを頼んで後で迎えに来ると言って、移転魔法で帰って行った。








邪神討伐から6ヶ月

初夏の心地いい季節に新王の戴冠式と結婚式が行われた


グレーデリ皇国からの支援で

各地方都市にビジョンが持ち込まれ、王都に来れない人たちにもお祭りの様子が伝わるようにした。


地下牢に拘束されているギガンテール侯爵一派の牢にもビジョンが持ち込まれる。

自分たちが廃しようとして居た者が誰だったか思い知らされるために。




世界中から王や王妃など、国の最高位の人たちが次々に来訪する。

魔王まで、王妃含めた側室や高位魔族を引き連れて来ていた。

それぞれエミリオは直接出迎える。



王都の防衛は、古龍などが自分の配下を呼び、いっきに引き受けていた。

人化出来る者は、騎士団と共に街中や街道にも配置されていた。

羽は龍人と分かるようにしている、それだけで威嚇になるからである。


魔族の高官たちは顔を引きつらせていた、魔王でも古龍には敵わないからである。


即位式は参加人数が、数万人になるので、闘技場を改装してそこで行うことにした。



「どうしたの?フロライン」

「キ・緊張しないんですか?・・・凄い人ですよ」

「そうだね、皆が君の美しさに心を奪われないか心配だよ、私の物なのにね」

「エミリオ様・・・顔が近いです」

「此れで,晴れて夫婦だね」

「はい、長かったような短かったような・・・頑張ります」

「うん、一杯子供作ろうね!」

「!?え?そ、そっち?・・・違う王妃の仕事を」

「?え?それも王妃の仕事でしょう?」

「・・・それはそうですが・・・」

心臓が爆発しそうに跳ね上がって真っ赤になっているフロラインだった

「今晩から・・・頑張ろうね」

フロラインの額にキスを落とす


二人で長いレッドカーペットを歩いて王の前に膝をつく

先に王の誓いの言葉をエミリオが言い、王冠がエミリオの頭上に、

そして、フロラインが夫婦と王妃の誓いの言葉を言い、王妃の王冠がフロラインの頭上に載せられる

二人手を取り、観衆に向かう


大きな歓声と拍手、鳩が飛び、花火が上がった。



宴は終わることは無かった、町中お祭り騒ぎ、騎士団はトラブル解決に走り回っている、ウィリアムも駆り出されていた、ウィリアムもその方が気が紛れて良いと思っていた。


宴の途中でエミリオとフロラインは退席する

改装された王と王妃の部屋、個人の部屋と夫婦の部屋の3部屋続きになっている。


一旦二人はそれぞれの部屋に行き正装を解いて夜着に着替えて夫婦の部屋に入った

「緊張してる?」

二人ベットに座り、エミリオがフロラインの手を握る

「はい」

「最後までしてないけど近いところまでは何時もしてるんだから、何時もに最後が付け加えられるだけだよ」

「・・・・何時も緊張してます」

「可愛いね」

フロラインの頬に手を添えると、エミリをがフロラインの顔に近づくそのまま口づけして、ベットに倒れこむ。








「王陛下、お食事此処に置いておきます。」

そう言ったのは王妃付きの侍女だった

3日、二人は部屋から出てこない、食事は入口に行くと消えて、暫くすると空の食器が入口に置いてあった。



結婚式に来ていた人たちは3日目殆ど帰路に付いている

「ロゼッタ母上、エミリオは・・・」

「あら、久しぶりに呼んでくれたわねウィリアム」

「大丈夫よ、タメすぎでしょうあのこったら・・・律儀と言うか・・・(私の性格本当に厄介、Sっ気あるのもね、フロラインガンバ!)」

「私でははけ口にならなかったのか・・・」

「それとこれとは違うと思うわよ、貴方はあなた、フロラインはフロラインなのよ・・・大丈夫信じていいと思うわよ」

「ありがとうごさいます。母上」

「良いわね~”母上”ミレーヌ様に自慢しよう」

「だ!駄目です!」

「あらなぜ?あなたを私に取られた気になって怒るかしら?」

「逆です、私が嫉妬されるんです、母上の脳天ゴリゴリは手加減無しなんですから・・・」

「うーん、貴方の事それは自慢げにおっしゃて居るわよ、自慢の息子だって、ゲイでも」

「・・・ばれてますよねやっぱり、自慢って」

「多分お寂しいのだと思うわ、私とばっかり会ってるから、たまには手紙書いてあげてね」

「・・・はい」



エミリオはそのまま1週間出てこなかった


客室にエミリオが現れた

「母上・・・」

「くすっ・・・お帰り、

公務が待っているわよ世界の王様!」





フロラインはベットで悶絶していた・・・

(これは、絶倫を通り越しているのでは・・・

体は治癒魔法を掛けてくれたので全然辛くないけど・・・

精神が・・・)


シーツもベットも体もクリーンの魔法で綺麗だ、裸で枕に顔を埋めて悶えているフロライン

お腹を触って・・・


「子供出来たって言って解放されたってことは孕むまで抱くつもりだったのかしら」

そんなことは無いのだが、それを想って恐怖に震えた

「半分意識無かったんですけど~ご飯食べた記憶もお手洗い行った覚えもないんですけど」


食事は粉砕して胃に直接入れ、排泄はクリーンの魔法が、腸なども綺麗にしていたことを、フロラインはしらなかった。


恋愛小説の上を行くエミリオに恐怖と期待が混じって混乱しているフロラインだった。



エミリオは世界の王として、それから140年生きた、母ロゼッタが64で無くなると、9番目の精霊はエミリオの元に来た、フロラインも94まで生き、5男3女に恵まれ、3男が8精霊持ちで次の王となった。

それから平和な世界が続いていった。






戴冠式を終え帰ってきた王夫婦に30過ぎの女性が近づいていく

「お父様、お母様、お帰りなさいませ」

「ただいま、マルガリータ?あなたも来ればよかったのに戴冠式、エミリオ素敵だったわよ」

「いえ、私は・・・」

「手どうしたの?荒れてるじゃない」


「掃除を・・・」

「貴方は王女なのよそんなことしなくて良いの!」

「でも、出来そこないの出戻りです、獄つぶしにはなりたくないので」

「そ!そんな事誰も思って無いわ!」


抱きしめるロゼッタ


マルガリータはロゼッタの最初の双子の子

皇太子がもう片割れになる。

政略結婚だった、ロゼッタは猛反対したが、聞き入れられなかった。


”ベンデーソン国”エミリオが滅ぼした国

もう一つ原因があった、

嫁いだ”ベンデーソン国”の王からマルガリータはDVを受けていたのだ。

そのことを、マルガリータは誰にも言わなかった、エミリオにも口止めしていた。


ロゼッタは聞いては居ないが、エミリオとの意思の疎通で気がついていた。


エミリオも、対策を取っていたにもかかわらず、防げなかったことを後悔していた。

”ベンデーソン国”王室は全員処刑した。それは。防げなかった自分への苛立ちも含めていたようだった。











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