第13話~新学期2年~
4月を迎え僕達は2年生になった。新1年生はおらず、2年生になっても後輩はいない。とても不思議な気持ちだ。
ケンちゃんも明日香さんも3年生になり、クラスが別々になった。この学校は3年生になると別の教室授業になる。田舎の学校特有だけど、1人の先生に対して2人の生徒なので家庭教師みたいになる。それゆえに、この学校からは、いつもそこそこの進学校に行ける。
奈緒子は相変わらず真面目に勉強している。
「奈緒子は将来の夢とか考えてるの?」僕のふいな質問に奈緒子は少し考えた顔をして、「お医者さんになりたいかな」と答えた。
「お医者さん!すごいじゃん!しっかりした将来を考えているんだね!」僕は心から感心した。
「お父さんを病気で亡くしたから、私がお医者さんになって同じ様な病気の人を助けてあげたいの。」
奈緒子は真っ直ぐ見つめたままそう答えた。
「豊は将来何になりたいの?」
「僕か…。うーん。今はまだこれって言うのはないんだけど…。」
将来をしっかり見据えている奈緒子に対して僕は恥ずかしくなった。
「豊らしくていいんじゃない?それも豊の魅力だよ!元気出しなって!」僕の背中を笑いながらバンバン叩く。
「そういえば、豊に渡したい物があるの!」そう言うとカバンから小さなハートの形をしたキーホルダーを僕に手渡した。
「なにこれ?」僕はキョトンとした顔で奈緒子を見た。
「豊…、キーホルダー知らないの?」嘘でしょ?って顔で驚く奈緒子
「い、いや、キーホルダーは知ってるよ!このタイミングとなぜハートなのかって…」僕は明らかに動揺していた。
「ほら、この間のバレンタインの日に風邪で休んじゃったから、代わりに手作りで何かあげたいなって思ってたから!」
「奈緒子にしてはちゃんとしたハートの形になってるじゃん!」
奈緒子は少しムッとした顔をして「奈緒子にしては!って失礼だから返して!」
僕は「冗談だよ」と笑うと、つられて奈緒子も笑いながら「大切にしてね!」と僕に言った。
僕はこのキーホルダーを一生大切にしようと心の中で誓った。
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